2013年6月12日水曜日

道義的に問題のある県議会議員の法的責任

司法書士の岡川です。

どこかの県議会議員が病院でクレーマーと化してブログ大炎上というニュースがありましたが、その議員の主張の中に世間の賛同を得られそうな部分が全くないので、何を思ってそんなことしちゃったのか、ただただ疑問に思うばかりです。


ところで、怒って診療報酬も払わずに帰ったという悪事まで堂々と大暴露してまして、いや、そりゃ誰がどう考えても駄目でしょうと。
どっちが悪いですかと世間に問うまでもなく。


ただ、これが法的問題となると、この人の行為は別に犯罪じゃないんですよね。
なぜ犯罪じゃないかというと、単純に「当てはまる罪がないから」です。

近代国家では、「これは犯罪」として法律に列挙された行為だけが犯罪なのです。
これを罪刑法定主義といいます。


例えば、ブログで病院の悪口(っぽいこと)を書き連ねていますが、名誉を棄損するような事実の摘示は全くなく、誰の名誉も棄損されていない(しいて言えば、勝手に自分の名誉が大きく棄損されたといえそう)。
そうなると、名誉棄損罪等は関係なさそうです。

また、「病院の対応に腹を立てて金を払わず帰る」という行為に適用できる条文は、どの法律にもありません。
単純に「金を払わない」というのは、犯罪じゃないのです。
窃盗罪は、物を窃取しないといけないし、強盗や詐欺は強奪したりだましたりしないと成立しない。


もちろん、債務を免れるわけがないですので、結局払わないといけないですし、厳密に法律を適用すれば、履行遅滞で遅延損害金を支払う責任があります。
15,000円分の検査を受けた上客らしいので、1日あたり約2円の遅延損害金が発生します。
もし1週間支払いが遅れたら、遅延損害金14円ナリ。


結論。
某県議会議員の法的責任は、診療報酬を支払うまで1日あたり2円。

では、今日はこの辺で。

※注意
この記事を見て、「無銭受診は犯罪じゃない」と一般化してはいけません。最初から払うつもりもなく受診して、お金払わず帰ってきたら、詐欺罪が成立します。
その場合、病院を「騙して」診療してもらったということになるのです。
 

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