2013年8月20日火曜日

罪刑法定主義の派生原則その1「法律主義」

司法書士の岡川です。

昨日の続きです。
「法律なければ刑罰なし」という、近代刑法の大原則である罪刑法定主義ですが、細かくみていくと色々な原理・原則がそこに含まれています。
それらは、罪刑法定主義の派生原理(派生原則)とよばれます。

そして、今日紹介するのは、「法律主義」です。
これは、何が犯罪で、どういう刑罰が科されるか、という刑罰法規は、形式的意義における「法律」で定めなければならないとする原則です。

この、形式的意義の「法律」とは何でしょうか。
日常会話で「法律」といえば、国の定めるルール全般を指すこともありますが、厳密にいえば、国が定めるルールには「法律」以外にもいろんな形式の法が存在します。
例えば、日本国憲法は、「憲法」という、「法律」とはまた別の法形式です。
したがって、憲法改正には法改正と異なる手続きが必要になります。
また、立法府ではなく行政府が制定する法規範のことを「命令」といいます(法律用語の「命令」は、非常に多義的なのですが、ここでは行政機関の制定する法の意味)。
あるいは、都道府県や市町村議会で定められる法として「条例」という法形式もありますね。
(日本にはどんな「法形式」があるか、という詳しい話はまた後日→色々な法形式

その中でも、形式的に「法律」とされるものは、国の立法府である国会の議決を経て制定される法をいいます。
この「法律」の形式で制定されていなければならない、逆にいえば、「政令」や「省令」といった、「法律」以外の形式で定めてはいけないというのが「法律主義」の意味です。
「法律」という「国会で制定される法」の形式でなければならないというのは、罪刑法定主義の民主主義的な要請に基づくものですね。

もっとも、憲法73条6号但し書きには、「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」とあります。
逆にいえば、日本国憲法は、「法律の委任」があれば一定の範囲で「政令」という法形式で罰則を定めることも許容しています。


では、地方自治体が「条例」という法形式で罰則を定めるのはどうでしょう?
条例で罰則を定めることについて、日本国憲法には明文の規定はありません。
罪刑法定主義は、憲法31条に規定された実定法上の原則であると考えられていることから、罰則付きの条例が罪刑法定主義(法律主義)違反となれば、これは違憲だということになってしまいます。
これには色んな考え方があるのですが、結論的には、罪刑法定主義(法律主義)に反しない(合憲)とされています。
前提として、地方自治法14条3項には、「条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と定められており、「法律」が「条例」に包括的に委任しています。
したがって、この包括的な法律の委任が、罪刑法定主義の要請を満たすか、という問題になるのですが、「条例だって国会と同じく地方議会で民主的に制定されるのだから、罪刑法定主義の趣旨に反しない」といった説明がされます。

このように、原則には例外がつきもので、法律主義といっても、何が何でも全てを「法律」で定めなければならないというものでもありません。
ただ、「法律」以外の法形式で罰則を定める場合は、その許容範囲が限定されているのです。

ところで、法律主義ではなく、「慣習刑法の排除」が派生原則として挙げられることもあります。
慣習刑法の排除とは、犯罪と刑罰が専ら慣習法によって定められてはならないとする原則です(ただし、法律の存在を前提に、解釈において慣習が考慮されることまでを禁じるものではありません。)。
結局はどちらも同じ趣旨であり、法律主義は当然に「慣習刑法の排除」という原則を含んでいます。
なので、法律主義の説明として慣習刑法の排除が言及されることもありますね。

長くなったので、続きはまた次回。

では、今日はこの辺で。

罪刑法定主義シリーズ
1.罪刑法定主義
2.罪刑法定主義の派生原理その1「法律主義」 ← いまここ
3.罪刑法定主義の派生原理その2「遡及処罰の禁止」
4.罪刑法定主義の派生原理その3「類推解釈の禁止」
5.罪刑法定主義の派生原理その4「絶対的不確定刑の禁止」
6.罪刑法定主義の派生原理その5「明確性の原則」

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