2013年10月17日木曜日

アンパンマンの印税の行方

司法書士の岡川です。

アンパンマンの作者、やなせたかし氏が亡くなりました。
どうやら子がいなかったらしく、遺産の行方を気にする人も出てきているようです。

やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方


「問題は遺産の行方です。93年に奥さんに先立たれ、子供も親戚もいないそうです。関係者の間では、遺言で誰かを遺産の受取人に指名しているのか、それとも遺言を残さず遺産が国庫に入ることになるのかが話題になっています」(ある漫画家)

400億もあって、相続人がいないことがわかっていたなら、さすがに遺言ぐらい用意しているでしょうが、仮に何の用意もしていなかったり、用意していたとしても法的に有効な遺言でなかったとすれば、相続人を探す手続きが始まります。
それでもし相続人が見つからなかった場合、「特別縁故者」がいるかどうかが問題になります。

特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」をいいます(民法958条の3)。
例えば、内縁の妻などがいれば、相続人ではありませんが、この特別縁故者に該当する可能性があります。
もしそういう人がいれば、家庭裁判所に請求して相当と認められると、相続財産の「全部又は一部」を取得することができます。

特別縁故者もいなければ、遺産は全て国庫に帰属することになります。


ではその場合、アンパンマンは国のものになって、アンパンマンの印税が国の収入になったりするのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

アンパンマンをはじめとする、やなせたかし氏の著作物に関する著作権については、国庫に帰属することなく、消滅します(著作権法62条)。

著作権は、相続人がいれば相続人が相続することになりますし、法的に有効な遺言で誰かに遺贈されていればその人に帰属することになりますが、そのどちらでもなければ、「国が著作権を取得する」のではなく、「著作権が消滅する」という制度になっています。
著作権は、著作者の死後50年存続するというのはよく知られてますが、それは著作権が帰属する主体(相続人等)がいることが前提です。

実際にアンパンマンの権利関係がどうなっているのかは分かりませんが、やなせたかし氏が著作権を生前に譲渡しておらず、遺言も残していなかった場合は、アンパンマン(厳密には、「アンパンマンというキャラクターそのもの」ではなく、アンパンマンのイラストなど)はパブリックドメインになります。
もちろん、アニメーション作品などは、やなせたかし氏に権利が帰属しているわけではないので、今日からアンパンマンのアニメはyoutubeで流し放題!ということにはなりません。
ただ、例えばアンパンマンのイラストは、著作権者が存在しないわけで、誰でも勝手に使って良いことになりますね

権利関係を全く確認せずに書いているので、実際のところどうなるかについては、一切責任は持てませんけど(←ここ重要)。



商標権も同様に、商標権者に相続人がいなければ消滅する(商標法35条)のですが、どうやら「株式会社フレーベル館」が色々と商標権を持っているようなので、やなせたかし氏の権利が消滅したとしても、アンパンマンを使った商品を簡単に作ることはできなさそうです。
アンパンマンに関する登録商標は、こんな具合→「検索呼称:アンパンマン」。


ここまで、著作権が消滅する前提で書いてきましたが、逆に、遺言でどこかの団体等に遺贈していたりすれば、今後その団体等には、今までやなせたかし氏が得ていたアンパンマンの印税収入が入ってくることになりますね。

その辺で、なんかいい話が出てくるかもしれないし、出てこないかもしれません。


では、今日はこの辺で。

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