2014年3月20日木曜日

自己防衛としての成年後見制度(認知症の男性が自宅を競売にかけられた事件)

司法書士の岡川です。

一昨日昨日の続きです。

共有物分割請求をされても協議の中で請求者の譲歩を引き出すことは可能ですし、仮に訴訟になっても、適切に対処すれば、ある程度は自分の意向を判決に反映させることができます。

しかし、今回の事件で訴えられた男性は、裁判所に出頭もせず、反論もしなかったため、不動産会社の訴えが全面的に認められました。
すなわち、「競売にかけて、売却代金を分配する」という分割方法が裁判で確定したわけです。

通常であれば、男性はずっと住んでいるわけですし、裁判所で価格賠償の方法を提案するなど、分割方法を争えば、いきなり家を競売にかけられて住居を失うことにはならなかったでしょう(価格賠償ができないのであれば、競売になった可能性はありますが)。

かかりつけの医者は、男性の判断能力は「財産を管理できない最低レベル」だったといいますから、おそらく「後見相当」の判断能力だったのでしょう。
もし、予め男性に後見開始の審判がなされ、成年後見人がついていれば、成年後見人が裁判になる前にきちんと協議をすることができました。

いきなり訴訟になったとしても、成年被後見人に対する訴状の送達は不適法であり、後見人宛に訴状が送達されるため、後見人が法定代理人として裁判に対応することが可能です。
仮に裁判所が後見開始を見落として判決を出したとしても、後で覆すことができます。

後見開始の審判がされていれば、訴えを提起された時点で訴訟行為を行うことができなかったことは明らかなので、何とかなる可能性も高いのです。
しかし、そうでない限り、判断を覆そうと思えば、「当時は意思能力が無かった」と立証しなければならないという、非常に面倒なことになってしまいます。


成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産を守る制度です。
それは、相手が悪質商法の場合に限りません。
「知らないうちに、裁判で負けて財産を失う」ということもあり得ます。

上記の通り、成年後見制度は、「何かが起こる前に利用を始める」ことが最も効果的ですので、検討はお早めに。


では、今日はこの辺で。


この記事が「面白い」「役に立つ」「いいね!」「このネタをパクってしまおう」と思ったら、クリックなどしていただけると励みになります。
↓↓↓↓↓

※ブログの右上に、他のランキングのボタンもあります。それぞれ1日1回クリックできます。

成年後見シリーズ
第1回「成年後見制度入門
第2回「法定後見の類型
第3回「任意後見契約について
第4回「後見終了後の問題
第5回「後見人には誰がなるか?
第6回「成年後見制度を利用するには?
番外編「成年後見の申立てにかかる費用
番外編2「成年後見の申立てにかかる時間
(このほかにも、成年後見についての記事はありますので、右上の検索窓で検索してみてください)

0 件のコメント:

コメントを投稿