2014年11月21日金曜日

不在者の財産の管理

司法書士の岡川です。

空き家問題にも絡んできますが、所有者が不在で誰も管理していない財産が残されているという場合があります。
適切な管理がされていない空き家の中には、所有者の死亡が確認されて相続人がいないという場合もありますが、所有者の死亡は確認できていないが行方が分からないという場合もあります。

空き家の所有者がどこにいるかわからないと、苦情を言おうにも対応してくれる相手がいないということになります。

また、財産の権利者(所有者等)がいなくて困るのは、家屋(空き家)の場合に限らず、その他の財産であっても生じる問題です。
よくある事例では、例えば、相続が開始した場合に、共同相続人の一人が行方不明という場合があります。
遺産分割は、相続人全員でしなければ効力が生じませんので、一人でも行方不明になっていると具合が悪い。
やはり、行方不明となった相続人の財産(相続財産の相続分)を管理する人が必要です。


そんな場合は、利害関係人が家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることで、裁判所が財産の管理人を選任してもらうことができます。

「利害関係人」は、例えば、不在者に対して債権を有している人や、先の例でいえば他の共同相続人などです。

この「利害関係人」という概念は比較的広く解されています。
例えば、事実上財産を管理している人は、その財産を所有者(不在者)に返還すべき義務を負いますので、これも利害関係があると考えられます。
ただ、単なる知人友人などはさすがに利害関係人には含まれません。

利害関係人が誰もいなければ、検察官も不在者財産管理人選任の申立人になることができます。
まあ、検察が申し立てることはめったにありませんが。

不在者財産管理人が選任されると、その後はその管理人が裁判所と連携しながら財産を管理することになります。
苦情も請求も、管理人にすればよいわけです。


不在者の生死が不明の場合、延々といつまでも不在者財産管理人が管理を続けるわけにはいきませんので、どこかの段階で失踪宣告を申し立てることもあります。


ちなみに、面白いことに、大学の法学部などでよく使われている民法の基本書(教科書)である内田貴教授の『民法Ⅰ[第2版補訂版]』(東京大学出版会)の128頁に、不在者財産管理人の解説が6行だけ書かれているのですが、そこには「25~29条がこれを定めるが、余り重要性の大きくない規定である」とあります。

少し古い版なので最新の版ではどうなっているかわかりませんが、不在者財産管理人制度は、実務上、非常に重要な規定なわけでして、学者の認識と実務が思いっきり乖離している例ですね。


では、今日はこの辺で。


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