2014年12月29日月曜日

上級審での審理

司法書士の岡川です。

第一審の判決に不服があるとき、上級裁判所(高等裁判所や地方裁判所)に不服を申し立てることを「控訴」といいます。
更に上(最高裁判所や高等裁判所)に不服を申し立てることを「上告」といいます。

では、控訴審や上告審では、どのような審理が行われるのでしょうか。


三審制や上訴の制度は多くの国に存在しますが、その審理構造の立法例としては、「続審制」「事後審制」「覆審制」といったものがあります。

続審というのは、上訴された後も下級審の審理を続行する制度です。
上級審では、下級審で収集された訴訟資料(証拠等)を引き継ぎ、更に新しい訴訟資料も補充して審理をします。

日本の民事訴訟における控訴が続審制となっています。


事後審制というのは、審理を続行して事実認定をやり直すのではなく、原則として下級審の資料を基に下級審判決の当否を事後的に判断する制度です。

日本では、上告審や、刑事訴訟における控訴審が事後審制となっています。


覆審制というのは、事後審とは全く逆で、上級審では下級審とは無関係に新たな資料を基に審理をする制度です。
日本の旧刑事訴訟法が覆審制であったといわれています。

では、今日はこの辺で。

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2014年12月25日木曜日

裁判に対する不服申立制度いろいろ

司法書士の岡川です。

三審制の話と、その中心的な制度である判決に対する不服申立(控訴・上告)について書きましたが、裁判には判決以外にも「決定」とか「命令」があります(あと、家事事件手続では「審判」)。
これら「判決」以外の裁判に対する上訴を「抗告」(こうこく)といいます。

抗告には、期間制限のない「通常抗告」と、1週間とか2週間といった期間制限がある「即時抗告」があります。
抗告審の判断(決定)に対して更に上訴する場合を「再抗告」といいます。
抗告と再抗告をすることができる場合が「三審制」ということになりますね。

判決に対する控訴や上告と違い、決定や命令に対しては、手続ごとに抗告できるものとできないものが決まっています(「○○の決定に対しては、即時抗告をすることができる」みたいな規定があります)。

ちなみに、「即時抗告をすることができる」というのは、「即時 - 抗告をする」のではなく「即時抗告を - する」のです。
「即時抗告」でひとつの単語なので。


「抗告」と名の付く不服申立て制度には、以上のほかにも「許可抗告」「特別抗告」「執行抗告」「保全抗告」「準抗告」など色々ありますが、全部を説明するのは大変なうえに専門的になりすぎるので、思い切って全部省略。


それから、上訴ではない不服申立て(異議申立て)が用意されている場合もあります。
「上訴ではない」というのは、「上級裁判所に審理の場を移さない」ということです。


控訴や即時抗告など、一定期間内に不服申立てをすることができる裁判は、あとで判断が覆る(審理が続行される)可能性があります。
逆に、その期間を過ぎれば、基本的にはその判断が変わる可能性はなくなります。
この状態を「確定」といいます。

民事訴訟の判決書や、後見開始の審判書が届いた場合、「2週間したら確定する」といって2週間待たされるのは、その2週間は上訴(控訴・即時抗告)される可能性があるからです。
2週間を経過すればその可能性が消えますので、そこでようやく次の手続きに進むことができるというわけです。


不服申立てには期間制限があるものが多いですので、納得できない場合は、即座に対応しましょう。

では、今日はこの辺で。

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2014年12月22日月曜日

控訴と上告

司法書士の岡川です。

前回の「三審制」の続きです。

その前に復習ですが、「裁判」には、刑事訴訟で有罪無罪を決めたり民事訴訟で請求を認容したり棄却したりする「判決」のほか、手続中の付随事項について判断する「決定」や「命令」、家事事件手続での判断である「審判」といった種類がありました(「裁判」の意味)。

判決…口頭弁論に基づいて裁判所がする終局的判断や重要な事項の判断
決定…裁判所がする付随的派生的事項や暫定的事項についての判断
命令…裁判長や受命裁判官がする付随的派生的事項や暫定的事項についての判断
審判…家事事件手続法に基づき家庭裁判所が行う判断

これらの裁判に対して、3回まで審理を受ける(2回上訴する)ことが認められる制度を「三審制」といいます。


さて、ではまず最も重要で中心的な判決手続での上訴について。

第一審(訴えを提起した1回目の審理)の判決に対する上訴を「控訴」といいます。
そして、第二審(控訴審)の判決に対する上訴を「上告」といいます。


第一審が地方裁判所や家庭裁判所なら、判決に不服があればひとつ上の高等裁判所に控訴することができます。
そして、控訴審判決に対して不服があれば、さらにひとつ上の最高裁判所に上告することができます。

これに対し、第一審が簡易裁判所なら、控訴はひとつ上の地方裁判所にします。
控訴審判決に対して不服があれば、上告は高等裁判所にします。


もし第一審が高等裁判所なら、最高裁判所に控訴を……することはできません。

それぞれの裁判所の所管事項について定めている裁判所法では、最高裁場所は上告を扱うことになっていますが、控訴を扱うという規定が存在しないのです。
なので最高裁判所は控訴審にはなりません。

ではどうなるかというと、第一審判決に対して控訴ではなく上告することになります。
もちろん最高裁判所より上の「超最高裁判所」なんかはありませんので、審理はここで終わり。
つまりこの場合は二審制となります。

そもそも第一審が高等裁判所になる場合があるのかというと、実はあるのです。
刑事事件では内乱罪の審理がこれに当たりますし、一部の行政訴訟(特許訴訟である審決取消訴訟など)も第一審が高等裁判所になっています。


ところで、サラッと書きましたが、場合によっては三審制なのに最高裁判所まで行かないことがあること気づきましたか?

「第一審が簡易裁判所の民事訴訟」は、第二審(控訴審)は地方裁判所で第三審(上告審)は高等裁判所なので、最高裁判所に行かずに3回の審理が終わります(刑事訴訟は第二審が高等裁判所になるので、上告審は最高裁判所で行います)。

しかし、たとえ訴額140万円以下の訴訟であっても憲法違反などの事由があれば、憲法の番人たる最高裁判所に最終的な判断を求める道が開かれている必要があります。
そこで、「憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とする」場合に限り、高等裁判所での上告審判決が出た後に更に最高裁判所に上告することができます。
これを特別上告といいます。
もっとも、特別上告によって判決の確定は妨げられません。


もうひとつ特殊な例で、第一審判決に対して、控訴せずにいきなり上告する方法もあります。
これは、民事では飛躍上告(飛越上告)、刑事では跳躍上告といいます。


さて、判決以外の裁判に対する上訴についても書きたかったのですが、意外と長くなったのでまた次回に持ち越し。

では、今日はこの辺で。

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2014年12月19日金曜日

三審制について

司法書士の岡川です。

日本の訴訟手続には、原則として「三審制」という制度がとられています。
民事も刑事も同様です。

三審制とは、1つの訴訟事件で3回まで別の裁判所で審理を受けることができる制度です。
慎重な審理を行い、国民が間違った(不当な)裁判で不利益を受ける可能性を極力避けるために、別の裁判所の判断を仰ぐことを認めるものです。


裁判所には上下関係(審級関係)があり、三審制における3回の審理は、下位の裁判所から上位の裁判所に審理の場が移っていきます。
つまり、判決に不服がある場合、上級裁判所(より上位の裁判所)に審理のやり直し(続行)を申し立てることになります。

裁判に対する上級裁判所への不服申立てを「上訴」といいますが、3回の審理を受けられるということは、2回上訴できるということになります。


裁判所の審級関係は、

最高裁判所>高等裁判所>地方裁判所>簡易裁判所

という具合になっており、左が上級裁判所、右が下級裁判所です。
(なお、「下級裁判所」という用語は、最高裁判所以外の4種類の裁判所を指す語でもあります)

右側の裁判所での裁判に不服があれば、左側の裁判所に上訴することができます。


基本的にはこの順番通り、簡易裁判所の裁判に対しては地方裁判所に、地方裁判所の裁判に対しては高等裁判所に、高等裁判所の裁判に対しては最高裁判所に上訴することになります。
ただ、刑事事件については、簡易裁判所の裁判に対する上訴は高等裁判所の管轄となっています。

家庭裁判所は、地方裁判所や簡易裁判所と取り扱う事件が異なるのですが、審級としては地方裁判所と同列で、家庭裁判所の裁判に不服がある場合の上訴は高等裁判所に対してします。
もっとも、簡易裁判所は家庭裁判所の下位にあるわけではありませんので、簡易裁判所からの上訴を扱うのは地方裁判所だけです。


ところで、「日本は三審制」というのは、義務教育レベルでは正しいですが、厳密にいうと例外もあります。

判決手続については基本的には三審制(判決に対しては2回上訴できるのが原則)なのですが、場合によっては二審制になる(判決に対して1回しか上訴できない)ことがあります。
また、決定手続(「決定」という形式の裁判がされる手続き)については、二審制が取られていることが結構あります(つまり、決定に対しては1回しか上訴できないことも多い)。

「判決」とか「決定」の意味については、「『裁判』の意味」を参照。

ちょっと長くなったので、続きは次回にしましょう。

では、今日はこの辺で。


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2014年12月18日木曜日

後見人による不動産の売却

司法書士の岡川です。

後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)は、その代理権の範囲内で本人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)の財産を管理し、処分することができます。
後見人等は、法律で権限を認められた代理人(法定代理人)ですから、権限を濫用したり権限外のことを行わなければ、財産の管理処分は、法定代理人の判断にゆだねられています。
代理人にある程度の裁量がなければ、代理人の意味がありませんからね。
ただし、後見人等は、本人の意思の尊重義務を負っていますから、あくまでも本人の(利益の)ために行動します。


ですから、大きな財産の処分、例えば不動産を売ったり、株式を売却するような場合も、(法律の建前上)原則として本人や裁判所の了解を得る必要はありません(「代理権の範囲内にあれば」の話ですので、保佐人や補助人の場合、その処分を行う代理権があることが前提です)。
もちろん、その処分が不適切だった場合は、善管注意義務違反に問われる可能性がありますので、実務的には、大きな財産の処分をする前には、裁判所と相談したり、本人の意思を確認したりはしますけどね。


ところが、原則として後見人等に任せられているといっても、後見人等の判断のみには委ねられていないものがあります。
それが、「居住用不動産の処分」です。

後見人等が居住用不動産を処分する場合には、必ず家庭裁判所の許可が必要です。
そのため、居住用不動産を売却した場合の移転登記(名義の書き換え)には、裁判所の許可証(審判書)を提出しなければなりません。
(なお、専門的なことをいうと、登記原因証明情報にも、居住用不動産であることと、許可を得たことを記載します)


「居住用不動産」とは、本人が現に住んでいる家であったり、今は施設に入所しているけど以前住んでいた家などを指します。
「処分」というのは、売ったり、誰かに貸したり、抵当権を設定(担保に入れる)したりすることです。

居住用不動産の処分だけは、広範な代理権が認められている成年後見人であったとしても、その単独の判断に任せると本人の不利益になる可能性があるので、裁判所が慎重に検討したうえで結論を出すことになっています。
そして、本当に本人の意思に沿う処分なのかを、裁判所がチェックすることになります。

例えば、「本人の介護費用を捻出するために既に住んでいない家を売る」といった正当な理由があれば許可されるでしょう。


後見人は、常に、「本人の判断能力が正常であったならば、どういうことを望むか」を考えて行動しなければなりません。
なかなか難しいことなのです。

では、今日はこの辺で。


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2014年12月15日月曜日

親告罪について

司法書士の岡川です。

著作権の話が続いていますが、ちょっとここで話題を変えて刑事訴訟の話でも。

犯罪者を処罰するには、捜査機関(主に警察)が捜査し、検察官起訴(公訴を提起)して、裁判所が有罪判決を言い渡す、というプロセスをたどります。
日本では、犯罪者を訴追する権限を有するのは、原則として検察官だけです(いくつかの例外はありますが)。
これを起訴独占主義といいます。

起訴独占主義の下では、たとえ犯罪の被害者でも、私人が直接犯罪者を訴追することはできませんが、その代わり、検察や警察に対して、犯人を起訴するように訴えることが可能です。
これを告訴といいます。

基本的に、告訴がなくても検察は必要とあれば起訴します。
また、告訴があっても検察が必要ないと考えれば起訴しません(これを起訴便宜主義といいます)。

ただ、犯罪の中には、「告訴がなければ公訴を提起することができない」と規定されているものがあります。
そのような犯罪を「親告罪」といいます。

犯人が起訴されること自体が被害者にとって不利益を及ぼすような罪(一部の性犯罪等)や、一般的に被害が軽微な罪(器物損壊罪等)は、罰則規定とともに「告訴がなければ公訴を提起することができない」と規定されています。


著作権著作者人格権の侵害行為にも罰則が規定されていますが、これも親告罪とされています(著作権法123条)。
著作権侵害行為に対して、処罰を求めるかどうかは、著作者の意思を尊重することになっているわけです。


親告罪は、告訴がなければ犯罪が成立しないわけではなく、犯罪成立の要件は満たしています。
観念的にいえば、犯罪は犯罪です。
ただ、手続上、告訴がなければ起訴されず、起訴されなければ有罪になることもないということになります。

では、今日はこの辺で。

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2014年12月12日金曜日

CマークとRマーク

司法書士の岡川です。

↓こういうマークを見たことはありませんか。

©


視力検査ではなくて。
イラスト等の端っこに、たまにこのマークがついていることがあります。

これはアルファベットの「C」です。
「C」は「copyright=著作権」の「C」ですね。

「これは著作権の保護の対象になっています」という意味で付けます。

日本の著作権法は、著作物が成立したら当然に著作者に著作権が帰属する無方式主義を採用しています。
よって、このCマーク、日本ではあっても無くても大して違いは無い(せいぜい「著作権は放棄してませんよ」という警告程度の意味しかない)のですが、外国の法制度では、こういうマークが著作権を主張する要件となっていることもあります。


似たようなのに、こういうのもあります。


®

こっちは見たとおり「R」マークです。
「R」は「Registered Trademark=登録商標」の「R」です。

「商標登録されていますよ」ということを意味しているのですが、登録することが商標権が発生する要件であって、Rマークを付けること自体は保護の要件ではありません。
もっとも、著作権と違って商標権は無方式主義ではありませんので、商標が登録されているのかされていないのかは一見して分かりません。
そこで、Rマークなどで商標登録されていることを表示するのが努力義務となっています(商標法73条)。
逆に、登録商標でもないのに勝手にRとか付けるのは虚偽表示として「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」となりますので注意しましょう。

では、今日はこの辺で。


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2014年12月9日火曜日

著作権の基礎知識

司法書士の岡川です。

昨日は著作者人格権の話をしましたが、そういえば、きちんと著作権の話をしたこともなかったですね。

著作権とは、著作物に関する独占的な権利であり、そのうち財産的権利をいいます。
「著作権」という権利があるのではなく、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、譲渡権、翻案権・・・といった、色んな権利(これら個別の権利を「支分権」といいます)の総称が著作権です。

「著作物」というのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」という定義がされています(著作権法2条1項1号)。

人の「思想又は感情」が含まれていないといけないので、自然物(芸術的な形の岩とか)や事実そのものは著作権の保護の対象にはなりません。

また、「表現したもの」でないといけないので、思想やアイデアそのものは著作権の保護の対象とはなりません。
例えば、新しい絵画の表現技法を作り出しても、その技法そのものは著作物ではなく、その表現技法を基に具体的に描かれた絵画が著作物として保護の対象となります。
これが著作権に関する基本的な考え方であり、「表現・アイデア二分論」といいます。

「創作的に」というのも、著作権の要件です。
ここでいう創作性は、高度な芸術的・学術的価値があったり進歩的なものであったりする必要はなく、著作者の何らかの「個性」が表れていればよいと解されています。
したがって、「既存の表現をそっくり模倣したもの」とか「誰が表現しても同じような表現にしかならないようなもの」(不可避的な表現、ごくありふれた表現)を保護の対象から排除する趣旨です。


「表現したもの」が著作物だといっても、物体そのものを対象とする権利ではありません。
物体そのものは、所有権などの物権の対象となります。

例えば、紙に1枚の絵を描いたとして、その何かが描かれている紙が著作物なのではなく、そこに描かれた表現が著作物です。
すると、その(物体としての)絵を誰かに売った場合、買主に所有権は移転しますが、著作権は必ずしも買主に移転しません。
逆に、その何かが描かれている紙の所有権は手元においたまま、そこに描かれた表現に関する独占的な利用権(=著作権)を譲渡することも可能です。
私たちが本屋で本を買う場合も、物質的な意味での「本」を買う(所有権を取得する)のであって、その中の記述に関する権利(著作権)自体は著作者のもとにあるのです。


定義に当てはまる「著作物」を著作者が作り出せば、著作権はそれと同時に何らの手続きをとらなくても発生し、かつ、著作者に自動的に帰属します。
特許庁に出願して登録しなければ権利が発生しない特許権などとは異なります。

著作権は、他人による著作物の(無許諾での)利用を原則として禁止する権利です。
著作権者は、著作物を複製したり、翻訳したり、頒布したり、ネットに流したりすることができますが、逆にいえば、著作権者以外の者が勝手にそれらを行うと、著作権侵害となります。

前述のとおり、例えば本を購入してその本の所有権を取得したとしても、その本に記述された文章の著作権までは取得できません。
したがって、その本を全部コピーして誰かに売ったりすれば、それは著者の著作権を侵害する行為となります。


ちなみに、著作権は、財産権ですから、誰かに譲渡することも可能です。
そのため、「著作者」と「著作権者」が異なることもあります。
ただし、著作者には著作者人格権がありますので、注意が必要です。

著作権は、特許権なんかと違い、簡単に成立するものです。
知らず知らずのうちに誰かの著作権を侵害しているかもしれません。
他人の文章やイラストを使うときは、十分注意しましょう。


では、今日はこの辺で。

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2014年12月8日月曜日

著作者人格権とは何か

司法書士の岡川です。

歌手の沢田知可子さんが、ヒット曲「会いたい」の作詞を手掛けた作詞家の沢ちひろさんから「著作者人格権」の侵害で訴えられたようです。

「著作者人格権」という、あまり見慣れない権利が出てきました。
著作権とは違うのでしょうか。


著作物を創作した人(著作者)には、2種類の権利が原始的に帰属します。
一般的に知られている「著作権」は、著作物に関する財産権としての性質をもつ権利であり、「著作財産権」とも呼ばれます。
厳密にいうと「著作権」という権利があるわけでなく、複製権とか翻案権とかの個別の権利(これを支分権といいます)の総称が著作権なのですが、とにかく著作物を色んな方法で独占的に利用する権利を有しています。

そしてもうひとつ、著作物の創作者には、その著作物に関する人格的利益についても権利が認められており、これを「著作者人格権」といいます。
こちらも、いくつかの権利の総称です。

著作者人格権に含まれる権利としては、次のようなものがあります。

1.公表権

まだ公表されていない著作物を公表する(公衆に提供し、又は提示する)権利です。
逆にいえば、「他人に勝手に公表されない」という権利です。
著作物を、世に出すか出さないか、どのタイミングで出すかは、著作者が決めるべきことであって、勝手に他人が公表することは公表権の侵害となります。
公表権侵害行為は、同時に著作権(著作財産権)も侵害することが通常ですが、人格権侵害という面も評価される(損害賠償請求の場合など)ことになります。

2.氏名表示権

著作物を公衆へ提供したり提示したりする場合に、著作者の氏名を表示する、又は表示しない権利です。
逆にいえば、「勝手に無名のまま公表されない」「匿名で公表したいのに勝手に氏名を記載されない」「他人の名前で公表されない」という権利です。
著作物を世に出す場合は、著作者と関連付けて公表されることで満足が得られる場合も多いでしょうし、逆に、著作者を知られたくないという場合もあるでしょう。
その選択権は全て著作者にあるということです。

3.同一性保持権

「著作物及びその題号の同一性を保持する権利」であって、「意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない」という権利です。
著作物を他人が利用する場合は、基本的には「そのまま」利用しなければならないのです(著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変などは認められています)。
著作者に意に反して改変することは、同一性保持権の侵害となりますが、どの程度改変すれば同一性保持権の侵害となるのか、というのは微妙な問題でもあります。
著作物をアレンジした場合等に同一性保持権侵害がしばしば問題となり、森進一の「おふくろさん騒動」でも問題となったのは同一性保持権でした。
今回の「会いたい」の問題も同一性保持権が問題となっているものと思われます。


その他に、著作者人格権の侵害とみなされる行為として、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」があります(113条6項)。


著作者人格権は、著作権(著作財産権)と違って一身専属性があり、譲渡することも相続することもできません。
では「放棄」することができるか、というのも問題になりますが、実務上は「著作者人格権を行使しない」との不行使特約が付されることがあります。

著作者人格権を侵害する行為に対しては、不法行為として損害賠償請求ができるほか、差止請求や名誉回復措置の請求ができ、罰則(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金)もありますので、侵害行為をした者が犯罪者として処罰されることもあり得ます(ただし、親告罪ですので著作者の告訴が必要)。


他人の著作物を利用するときは、著作者の経済的利益だけではなく、人格的利益も尊重しなければなりません。
あまりやりすぎてしまうと、訴えられることがありますので気を付けましょう。

では、今日はこの辺で。


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2014年12月5日金曜日

雑誌に載ってます

司法書士の岡川です。

突然ですが、COMPANY TANK(カンパニータンク)という雑誌の12月号に、事務所の紹介記事を載せてもらいました(なんか、一発ネタとして面白そうだったので)。

元阪神タイガースの今岡選手との対談という形です。
なので、今岡選手がうちの事務所まで来てくれて、お話しました。

https://picasaweb.google.com/lh/photo/LupThb_MFqmce_Ot_zfQotMTjNZETYmyPJy0liipFm0?feat=directlink


COMPANY TANK2014年12月号(国際情報マネジメント有限会社)掲載


お得情報・・・今岡選手は、思った以上に大きい。


しゃべった内容を、うまいことまとめてくれていますので、事務所紹介に使わせてもらいます。


そういうわけで、うちの事務所には今岡選手のサイン色紙が飾られています。

「今岡選手が座った椅子」に座りたい方は、岡川総合法務事務所までお越しください(宣伝)。
ついでに相談もお受けします。

では、今日はこの辺で。

2014年12月3日水曜日

「経過する日」と「経過した日」

司法書士の岡川です。

だいぶ前に期間の計算の話をしましたが、これに絡んで条文の表現の厳密な意味について解説しておきます。

まず「達する日」と「達した日」というのは、どちらも同じ意味です。
「20歳に達した日」というのと、「20歳に達する日」では同じ日を指します。
具体的には、「20歳の誕生日の前日」を指します(参照→「年齢計算の方法」)。

両者は、その条文が規定する内容がその日より前なのか後なのかによって表現が変わっているだけです。


これと似たような表現で、「経過する日」と「経過した日」というのがありますが、この2つは指し示す日が異なります。

例えば、12月1日を基準にして1週間の経過を考える場合、(初日不算入で)2、3、4、5、6、7、8日の24時でちょうど1週間です。
この時点を一瞬でも越えると「経過」となります。

このとき、「1週間を経過する日」というのは「12月8日」のことをいいます。

そして、これを経過した後の日である「12月9日」が「1週間を経過した日」ということになります。

「12月8日24時」だと「経過する日」に含まれる時刻ですが、「12月9日0時」となると「経過した日」の時刻だということになります。



では、今日はこの辺で。


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2014年12月1日月曜日

法律一発ネタ(その9)

司法書士の岡川です。

「生保」とメモすると、「生活保護」のことだったか「生命保険」のことだったかわからなくなる可能性がそこそこあります。

では、今日はこれだけ。