2015年2月11日水曜日

裁判に欠席したらどうなる?

司法書士の岡川です。

訴訟(いわゆる「裁判」といわれるやつ)手続は、裁判所で行われます。
裁判所は裁判をするためにあるので、これは当たり前ですね。

そして裁判所も役所(司法官庁)ですので、休日(土日祝日年末年始)は閉まっていますし、早朝とか夜も閉まっています。
つまり、裁判が行われる(法廷が開かれる)のは、平日の朝から夕方までということになります。
だいたい小さな郵便局が開いている時間帯ですね。

そうすると、昼間働いているサラリーマンなど、裁判の期日に出席できない場合があります。

その場合、裁判はどうなるのでしょうか。


まず刑事訴訟ですが、原則として、被告人が出頭しなければ開廷することはできません。
刑事訴訟は、被告人を刑に問うための重大な手続きですから、きちんと被告人が手続きに参加していなければ進められないのです。
「欠席裁判」というのは、刑事訴訟では原則として認められません(「推定無罪の原則」も参照)。

例外的に、50万円以下の罰金に当たる事件など、軽微な事件については、一定の場合には被告人欠席のまま審理を進めることができます。


他方、民事訴訟においては、原告(訴えた人)や被告(訴えられた人)が欠席しても構いません(原告が欠席することはあまりないと思いますが…)。
民事というのは、当事者同士の問題ですから、出席するもしないも当事者の自由なわけです。

ただし「擬制自白」という制度がありますので、被告が欠席して期日に何も主張しなければ、自白した(原告の主張を認めた)ものとみなされます。
つまり、欠席すると全面敗訴する可能性がある(欠席裁判)ことは受け入れなければなりません。

とはいえ、いきなり裁判を起こされて、いきなり「この日に来い」と呼び出されて、欠席したら全面敗訴で金払え!というのは非常に酷な話です。

そこで、1回目の期日だけは、答弁書等の書面を出しておけば、欠席してもその書面の内容を法廷で陳述したものとみなされることになります。
これを「擬制陳述」といいます。
何で1回目だけかというと、2回目以降の期日は、原告被告双方の都合を聞いて日程調整するからです(1回目は、原告の都合だけで決めます)。

実は、原告側が欠席して被告側だけ出席したという場合でも、擬制陳述は適用される(原告は訴状の内容を陳述したとみなされる)のですが、普通は訴えておきながら裁判所に来ないということはありませんね(期日を勘違いとかはあるかもしれない)。

実務では、被告側代理人(特に古くからの弁護士)は、1回目は基本的に答弁書だけ出して欠席するということが多いです。
とりあえず答弁書で全面的に原告の主張を否認しておいて、実質的な反論は2回目の期日までに行うこともよくあります。
本当は、1回の期日が空転することになるので望ましい態度ではないのですが、期日が差し迫って依頼を受けた代理人は、準備が間に合わないので仕方ないこともあります。


民事裁判のニュースなどで、「被告側弁護士は出席しなかった」というふうに報道されることもあり、「なんやこの弁護士やる気のないやっちゃなー」と思われるかもしれませんが、第1回口頭弁論期日に被告代理人弁護士が欠席するのはまったく珍しいものでもないのです。

まあ、「被告側弁護士は答弁書も出さずに欠席した」という報道があれば「なんやこの弁護士アホなんか?」と思っていただいて結構です(最悪の場合、損害賠償請求ものです)が、そういうことはまずありませんので。


民事訴訟では、代理人(弁護士や司法書士)がついていれば本人欠席でも手続きは進みますが、代理人任せにすることなく出席できる期日は出席するのが望ましいと思います(あくまでも代理人は代理人。本人訴訟が民事訴訟の原則です)。


なお、判決(宣告)期日は、民事と刑事で正反対。

刑事訴訟では、被告人の刑(あるいは無罪)を宣告する重大な手続きなので、原則として被告人が出席していないとできません。

他方、民事訴訟では、どうせ判決書は後から郵便で送られてくるので、判決期日は(重大な事件でもない限り)出席しないのが普通です。
その場合、裁判官は誰もいない(傍聴人はいるかも)法廷で判決を言い渡します。
誰かに聞いてもらうつもりもいでしょうから、裁判官が主文だけぼそぼそ呟いて終わります。

もちろん早く判決が知りたい場合(敗訴が濃厚で即控訴したい場合とか)は、聞きに行っても構いません。

では、今日はこの辺で。

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