2015年7月21日火曜日

賃貸物件の借主の義務

司法書士の岡川です。

日本は、比較的持ち家率が高いのですが、賃貸物件(マンションとかアパートとか)を借りて住んでいる人もたくさんいます。

賃貸物件に借りて住むというのは、法律的には、家主(建物所有者)と借主(居住者)との間で「賃貸借契約」を締結していることとになります。
居住用だけでなく、店舗等として使うために借りることもありますね。
私の事務所も、事務所として賃借しています。

賃貸借契約では、貸す側(家主とかオーナー)のことを「賃貸人」といい、借りる側のことを「賃借人」といいます。
貸すのは建物所有者であることが一般的ですが、たまに、賃貸人と所有者は別という場合もあります。

契約ですので、建物を借りると、貸した側にも借りた側には色々な義務(債務)が発生します。

ということで、賃貸借契約の当事者が負っている義務について書いてみたいと思います。


まず、賃借人の義務です。

賃借人の義務というのは、常識的にわかることがほとんどです。

まず賃料(家賃)を払わないといけませんね。
賃料は賃貸借契約で必ず決められるものですので、賃料の発生しない賃貸借契約は存在しません。
賃料なしで貸し借りする契約は、「使用貸借契約」という、また別の契約類型になります。

賃料の額は、契約で決められています。
賃料の他に、敷金とか礼金とか保証金とか更新料とか、よく分からないお金の支払が契約で決められていることもありますが、その契約が違法でなければ、それらのお金も支払わなければなりません。

それから、賃借人は契約で決められた「用法」、例えば「居住用」だとか「店舗用」といった取り決めに従って利用しなければなりません。
居住用で借りた家で、カラオケ喫茶とか始めるとうことは、難しい言葉でいうと「用法順守義務違反」ということになります。
あとこれも当然ですが、「善良な管理者の注意」をもって建物を管理する義務(善管注意義務)があります。
借り物なのですから、好き勝手に破壊してはいけません。

最後に、見落としがちですが、契約終了後、賃借人は賃貸人に対して建物を返還する義務を負っています。

借りた物は返さなければならない。
これまた常識ですね。


賃借人がやってはいけないこともあります。
これも義務といえば義務(不作為義務)なので気をつけなければいけません。

まずは、契約書に「禁止事項」として書かれたことはやってはいけません。
例えば、ペットの飼育禁止とかが契約の内容になっていることがありますが、そういう約束である以上、その建物でペットを飼育してはいけません。


契約書に書かれていることも多いですが、契約であえて規定しなくても、法律で「無断譲渡」「無断転貸」が禁止されています。

ここでいう譲渡というのは、賃借人がその建物を借りる権利(賃借権)を他人に譲り渡すことです。
転貸は、賃借権を譲り渡すのではなく、自分が借りている建物を更に別の人に貸す(いわゆる「また貸し」)ことです。

どちらも、賃貸人の承諾を得ずにやってはいけません。
賃貸人にとって「誰が借りているのか」は重要な関心事ですので、貸したつもりのない第三者が使うということは認められないのです。


賃借人がこれらの義務に違反した場合、賃貸借契約を解除する理由となりますので、気をつけましょう。

特に、無断譲渡・無断転貸をした場合は、催告もなく即刻契約解除ということも可能になりますので、借りた物を安易に「また貸し」することはやめましょうね。

長くなりましたので、家主側の義務については、また次回に。

では、今日はこの辺で。

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