2016年2月28日日曜日

日本ライフ協会が解散?事業継続?

司法書士の岡川です。

以前よりこのブログでもお伝えしている日本ライフ協会の問題ですが、方向性が決まったようです。

(前提として参照)
日本ライフ協会の預託金流用問題
日本ライフ協会が民事再生法適用申請した件

朝日新聞では、「日本ライフ協会、解散へ」と報じ、毎日新聞は「事業継続」と報じています。

日本ライフ協会、解散へ 自力再建を断念、事業は譲渡(朝日新聞)
<日本ライフ協会>事業継続、高齢者安堵と懸念(ヤフーニュース(毎日新聞))

微妙に趣旨が違うタイトルなので、結局のところ辞めるのか続けるのかよくわからないかもしれませんが、実は書いてあることは一緒で、要するに「日本ライフ協会自身は解散するけど、日本ライフ協会が行っていた事業は継続される」ということです。

どちらを重視したタイトルをつけるかで、大分イメージが異なりますね。


日本ライフ協会は民事再生手続中ですが、とりあえず「スポンサーが見つからずに破産」という事態は回避できたということになります。

民事再生には色々な手法が存在するのですが、スポンサーの支援を受けて、事業を継続してその収益から再生計画に基づいて弁済をしていくというのが典型的なもの(まさに、その法人の再生を目指すもの)ですが、事業自体をスポンサーに譲渡してしまい、事業の継続はスポンサー企業に任せて、自身は解散して清算するという方法もあります。

事業譲渡というのは、法人の資産や負債、取引先、各種の権利等の財産をまとめて譲渡することです。
関係者(債権者等)があることですので、経営者の一存で勝手にすることはできませんが、一定の手続を踏めば、民事再生手続中にも行うことができます。


日本ライフ協会は、公益認定も取り消されますし、組織的に色々と問題がありすぎるので、法人自体が事業を継続して再建することが難しい。
そこで、事業を引き継いでもらえる法人を探していました。
事業を引き継ぐ先の候補としていくつかの団体が噂されていましたが、最終的には「一般社団法人えにしの会」というところに事業譲渡することになったようです。
日本ライフ協会自身は、解散して清算することになるようです。


事業譲渡に必要な「一定の手続」の中には、事業譲渡を決定する際の手続きもあります。
法人の社員や債権者を利益を保護するための手続きです。

また、それだけでなく、事業譲渡が決定したあとの「すべての契約のやり直し」というのも含みます。
というのも、事業譲渡しただけでは、個々の財産や権利関係が当然に(自動的に)は移転しないからです。

日本ライフ協会と契約していた2600人の会員も、えにしの会との契約をし直すことで引き続きサービスを受けることになります。
大変な作業になりますね。


朝日新聞は、「入会金などの追加負担は原則、求めない」と報じていますが、毎日新聞は、「会員の追加負担は生じる見通し」と報じています。
朝日新聞の記事でも「預けたうちの4割ほどしか返還されない」とあるので、これを「追加負担」というかどうかの違いでしょうか。


事業が継続されるということで、会員にとってはひとまず安心です。
とはいえ、預託金が4割になるということはその分を損したことになりますし、葬儀等のグレードが落ちるかもしれません。
葬儀のグレードを当初の予定通りにしたい場合は、預託金を追加ということになるのでしょうか。

他にも、懸念事項はあります。

毎日新聞も報じていますが、えにしの会も法人自体が預託金を預かる「二者契約」という契約形態のようです。
二者契約という契約形態がダメかというと、必ずしもそうではない(むしろ、二者契約が原則でしょう)のですが、日本ライフ協会がそれによって不正を行った点に鑑みると、何らかの対策が必要になってくるかもしれません。
特に、会員が全国に何千人という規模になっていれば、全て法人に預託する形態であると、預託金の額が莫大になってしまい、不正の温床になりかねません。

それに、同法人は公益認定を受けていない一般社団法人です。
公益財団法人であった日本ライフ協会で問題が起こったわけですが、そもそも公的な監督の仕組みのない一般社団法人が同じ事業を行うことになる。
この点は、サービス利用者はきちんと認識しておく必要があります。


また、えにしの会は、会員数350人とのことで、日本ライフ協会に比べるとかなり規模の小さい法人です。
それが事業を引き継いだことで、一気に会員数3000人という大規模な事業者になります。
従業員も全員引き継ぐようです。
日本ライフ協会が急激な事業拡大で事業資金が足りなくなり、預託金を流用するに至ったことを考えると、本当に大丈夫かという不安も残ります。


えにしの会というのが、どういう活動を行っているのか知りませんので、同法人の活動を批評する立場にはありません。
消費者自身が判断するしかありません。

今後、同法人に限らず、同様のサービスを受けようと考えている方は、よくよく契約内容を確かめてから契約するようにしましょう。

では、今日はこの辺で。

(追記)さらにさらに続報です→日本ライフ協会の事業譲渡が白紙になり破産へ

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