2018年10月12日金曜日

債権法改正について(24)(保証2)

司法書士の岡川です。


ブログ更新頻度が月1回程度に落ち込んできました。
なかなか調べものしている時間がないというか、調べものはしてるんだけど調べるべきことが多いというかなんというか…。

今日も保証の話ですが、保証人から主たる債務者への求償権についての改正点です。

保証人が債務を弁済した場合を考えてみます。
債権者との関係でいえば保証契約に基づいて履行しただけの話なので、それはそれでいいとして、主たる債務者との関係では、本来は主たる債務者が支払うべきところを、保証人が肩代わりして支払ったことになります。

なので、当然っちゃ当然なのですが、保証人は主たる債務者に対して「代わりに支払っといたから、その分返せ」といえるわけです。
これを「求償」といいます。

では、どの範囲で求償できるかという問題。

例えば、1000万円の債務があったとして、保証人が現金で1000万円支払う代わりに、1500万円の価値のある土地を債権者に譲渡することで弁済に代えた場合(こういうのを代物弁済という)、消滅した債務は1000万円ですが、保証人が支払ったのは1500万円になります。

この場合、求償できるのは1000万円なのか1500万円なのか、現行法は明記していませんでしたが、改正法では、459条1項の括弧書きで、

「その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額」

と追記されました。
上記の例でいえば、主たる債務者に求償できるのは1000万円になるわけです。
保証人からすれば、1500万円の物を提供して債務消滅させてあげたんだから1500万円返せと言いたくなるところですが、主たる債務者側から見れば、1000万円しか債務は無かったのに何で1500万円返さなあかんねん!って話ですね。


それから、保証人が債務の弁済期前に弁済した場合はどうなるか。

第459条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
3 第1項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。

これは、改正法で新設された条文ですが、内容的には判例の明文化。
459条同様、債務者が利益を受けた以上に求償することはできないという意味では共通ですね。


求償権というのは、一定の要件を満たせば、事前に(つまり、自分が保証債務を履行するより前に)行使することもできます。
保証人は、主たる債務者に「後で代わりに債権者に支払うことになるから、先に俺に支払え」というわけです。
典型的には主たる債務者が破産した場合とか。

事前求償ができる場面のうち、改正法では「債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後10年を経過したとき。」というのが削除されました。
実務上使われていない(使えない)類型だったようです。


ちなみにここまでは、「委託を受けた保証人」の話。
つまり、債務者から保証人になってくれと言われて保証人になった場合です。

ただ、世の中には「委託を受けない保証人」というのもいます。
頼んでもないのに勝手に保証人になってくれるなんてステキですね。
実際は、家族がなってたりとか、営利目的なら債権者から保証料をもらってやってたりするわけですが。

この場合のルールは、基本的には現行法と変わっていません(規定は変わりましたが)。


求償関係で実質的な変更があった部分はこれくらいですね。

では、今日はこの辺で。

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