2018年10月27日土曜日

債権法改正について(25)(保証3)

司法書士の岡川です。

今日は、大幅な改正があった根保証契約の話です。

通常の「保証」というのは、ざっくりいうと「特定の債務について保証人が肩代わりする」という制度です。

これに対して、「根保証」というのは、「ある一定の範囲の債務について保証人が肩代わりする」という制度です。

継続的に債務の発生と消滅が繰り返されるような関係(例えば、継続的に融資と返済を繰り返している銀行と会社)にあるとき、個々の債務が発生するたびに、毎回保証人との間でも保証契約を締結するというのは面倒なことです。
そんなときは、保証人が保証する債務を、「AとBの間の金銭消費貸借契約に基づく債務全部」のような決め方をして、その範囲に含まれる限り、保証人に請求できるようにしておけば便利です。

これが根保証です。

根保証は債権者や主たる債務者にとっては便利なのですが、その分保証人にとっては過度な責任を負わされる可能性があります。
通常の保証なら、最初から債務の額は分かったうえで保証契約を締結するわけですが、根保証の場合、最初に決めた範囲に含まれていれば全部保証人が保証しなければならないわけで、AとBの間の金銭消費貸借契約に基づく債務全部を主たる債務の範囲にしていれば、主たる債務者AがBから金を借りれば借りるだけ無限に保証債務も膨れ上がるわけです。

それはさすがにまずいということで、根保証契約には一定の規制が設けられています。

現行法では、「その債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの(法人が保証人の場合を除く)」を「貸金等根保証契約」といい、貸金等根保証契約は、極度額(保証される債務の上限額)を定めなければ契約が無効になるとか、一定の要件が満たされればそれ以上債務が増えない(「確定」という)とか、いろいろ細かいルールが定められています。

保証人を特に保護する必要がある類型に限定してルールを厳しくしており、「債務の範囲に貸金等債務が含まれている」「保証人が法人でない」という縛りがあるわけです。

で、改正法では、この厳しいルールの対象を広げ、保証人が法人でないものを全て「個人根保証契約」と定義し、現行法で貸金等根保証契約にのみ適用されていた、極度額を定めないと無効とか確定の要件とかのルールが、個人根保証契約にも拡張して適用されるようになりました。

これにより、具体的に何が変わったかというと、例えば、家を借りるとき、多くの場合、連帯保証人が必要ですよね。
この連帯保証契約の債務の範囲は、賃借人が家を借りている間に発生する家賃全部なので、根保証契約なのです。

連帯保証人が個人であっても、債務の種類が賃料債務であって貸金債務でないため、現行法でいう「貸金等根保証契約」には該当しませんでしたが、改正法における「個人根保証契約」に該当します。
つまり、家賃の連帯保証契約にも、極度額の定めが必要になるわけです。
賃借人が家賃を払わない限り延々と連帯保証人に請求され続けるという事態が回避できるようになり、連帯保証人も過度な責任を負わなくて済みます。


細かく挙げれば色々変更があるのですが、大まかな趣旨としては、貸金等根保証契約に限られていた規制が個人根保証契約に拡張されたということで、あとはそれに対応した諸々の改正です。

では、今日はこの辺で。

0 件のコメント:

コメントを投稿