司法書士の岡川です。
facebookを見てると、「両親がオレオレ詐欺に引っかかって、コツコツためていた200万円がだまし取られたという事件」がシェアされていました。
息子が小切手を落として200万円が必要だという電話をしてきて、それを信じ切ったようです。
銀行に振り込むのではなく、犯人が家まで取りに来て、そいつに現金を手渡したようです。
その時の犯人の顔写真も晒されていましたが、最後まで少し疑っていた両親が写真を撮っていたとのこと。
それにしても顔写真を堂々と取らせるとは、余裕なのか、罪の意識がないのかわかりませんが…。
受け取るだけだから「知らなかった」と言えば罪には問われないという話で「受け子」に勧誘される例もあるみたいですけど、そう簡単に「知らなかった」が通用するほど世の中甘くないですからね。
世の中を舐めきった犯人なのかもしれません。
さて、どれだけ警戒していても、詐欺で騙される人が後を絶ちません。
今回騙された方も、自分は絶対に騙されないと思っていたようですが、息子の緊急事態を何とか助けようという一心で、見ず知らずの人間にお金を手渡してしまったようです。
子を心配する親心に付け入るのは何とも許せませんが、詐欺師というのはそういうもんです。
普通に考えたら、見ず知らずの人間に、家まで現金200万円を取りに行かせるなんてことはありえない。
でも、そういうありえないことでも信じてしまうのです。
そして、こういうふうに特殊詐欺に引っかかって犯人にお金が渡ると、それがまた詐欺グループの活動資金となって新たな被害者を生みます。
この繰り返しで特殊詐欺がなくならないのです。
ちなみに、今回の犯人、息子の名前はもちろん、生年月日や、兄の名前なども答えられたそうです。
それで信じてしまったようですけど、家族構成とか生年月日とか、詐欺のターゲットになった時点でそういう情報も漏れている可能性がありますので、それだけで信じてはいけません。
なんなら、小学校の名前とか本籍とか祖父母の名前とか、そんなのも知られてると思ったほうが良いでしょうね。
今の情報社会、闇のルートなんか一切持っていなくても、結構な情報をネットから知ることができます。
例えば、知人がfacebookでとある写真を掲載していました。
それは、自損事故をした車を撮影したもので、背景はどこにでもある町中の風景。
興味本位で、この写真から場所を特定できるか試してみたのですが、背景に映り込んだいくつかの情報とインターネットで調べた情報を駆使して、条件に一致するおおよその場所を推測し、グーグルマップで探してみたら、見事に同じ風景をストリートビューで発見することができました。
見ず知らずの人の職場とか、子供が通っている保育園とか、ネットで探せばいろんな情報が手に入ります。
私なんか本名をネットで晒してますしね。
職場の位置もバレバレです。
ちなみに私の職場の住所は、高槻市城北町一丁目14番26号シティパル城北105号の岡川総合法務事務所です。
電話番号は072-647-3305です。
ステマです。
よろしくお願いします。
合言葉というか、同一性を確認するための符号は、絶対に家族でしか知りえない情報でなければ意味がありません。
名前とか生年月日とか、そんなもんは周知の事実だと思っておいたほうがよい。
学校の名簿が流出してると、通っていた学校の名前とか、担任の名前とかも知られていると思ったほうが良い。
そういうもので確認すると、相手が知っていた時にはむしろ逆効果になりかねません(今回の件も、誕生日や兄の名前を知っていたことが、犯人を信じる一因となったようですから)。
息子を語る電話があって金を貸してくれと言われても本人が取りに来るまで渡さないこと。
息子は仕事で忙しいんだから、そんないつでも電話に出られるわけじゃないこと(たまたま電話がつながらなくて不安になって騙される例が多い)。
誕生日とか家族の名前なんかは、誰でも知っていると思っておいたほうが良いこと。
少なくともこの3点、みなさんのご両親にも念を押しておいてください。
これで被害にあうリスクを少しでも減らしておきましょう。
では、今日はこの辺で。
2016年7月3日日曜日
内乱罪は「既遂犯を処罰しない罪」って本当か?
司法書士の岡川です。
ぷらぷらとネットサーフィンしてたら、久しぶりにおかしな記事を発見したので、取り上げましょう。
こんな記事を見つけました。
既遂を処罰していない罪はあるのか?
以前書いた通り、刑法は、既遂犯処罰を原則としており、未遂犯というのは例外です。
しかしこの記事では、次のとおり、内乱罪は、未遂罪のみ処罰する犯罪で、既遂犯は処罰されないというふうに書かれています。
誰だ、そんな適当な解説してるのは!
法律の内容を知るには、まず、条文を確認することが大切です。
内乱罪というのは、次のように規定されています。
この条文は、このように読みます。
「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱すること」を目的として暴動をした者
内乱罪の規定する行為はあくまで「暴動」であり、かつ、統治機構の破壊等をその目的とする場合に成立する「目的犯」です。
※目的犯というのは、犯罪の成立に一定の目的が要件となっているものをいいます
内乱罪における統治機構の破壊というのは暴動の「目的」であって、破壊することが犯罪の構成要件要素となっているわけではありません。
実際に統治機構を破壊しようがしまいが、それを目的とする「暴動」を行えば、それによって既遂に達します。
内乱罪も間違いなく「既遂犯」の処罰が規定されているのです。
記事では、
とまとめられていますが、これは、何かの解説を読んで勘違いしているんだと思います。
内乱罪の保護法益は、国家の存立です。
この国家の存立という法益が現実的に侵害されてしまった場合、(もう国家は存在しないわけですから)暴動をした者を処罰することはできません。
つまり、処罰できなくなるのは、「既遂に達した場合」ではなく「保護法益が現実的に侵害された場合」です。
保護法益の現実的な侵害があった場合に成立する犯罪を「侵害犯」といいますが、内乱罪は、宿命的に「侵害犯として規定することはできない」ということになります。
そのため内乱罪は、法益侵害の危険が発生した段階(ここでは暴動をした段階)で犯罪が完全に成立する「危険犯」として規定されています。
この説明と、既遂犯と未遂犯の話とがごっちゃになっているのでしょう。
危険犯は、危険が発生したときに、既遂になるのです。
決して、未遂犯として規定されているわけではないのです。
犯罪には、
既遂犯と未遂犯
結果犯と挙動犯
侵害犯と危険犯
他にもいろいろとカテゴライズの方法はありますが、それぞれ似て非なるものなので、ごっちゃにならないように注意しましょう。
ま、これを知って役に立つのは、試験前の法学部生くらいだと思いますけどね!
あと、危ないから内乱はやめようね!
では、今日はこの辺で。
ぷらぷらとネットサーフィンしてたら、久しぶりにおかしな記事を発見したので、取り上げましょう。
こんな記事を見つけました。
既遂を処罰していない罪はあるのか?
以前書いた通り、刑法は、既遂犯処罰を原則としており、未遂犯というのは例外です。
しかしこの記事では、次のとおり、内乱罪は、未遂罪のみ処罰する犯罪で、既遂犯は処罰されないというふうに書かれています。
内乱罪の既遂、つまり国の統治機構を破壊したなどという既遂については、処罰規定を置いていません。
これは、内乱罪が既遂となった場合、既に国の統治機構が破壊されるなどして、行為者を処罰することがそもそもできないからです。
誰だ、そんな適当な解説してるのは!
法律の内容を知るには、まず、条文を確認することが大切です。
内乱罪というのは、次のように規定されています。
国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。(刑法77条)
この条文は、このように読みます。
「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱すること」を目的として暴動をした者
内乱罪の規定する行為はあくまで「暴動」であり、かつ、統治機構の破壊等をその目的とする場合に成立する「目的犯」です。
※目的犯というのは、犯罪の成立に一定の目的が要件となっているものをいいます
内乱罪における統治機構の破壊というのは暴動の「目的」であって、破壊することが犯罪の構成要件要素となっているわけではありません。
実際に統治機構を破壊しようがしまいが、それを目的とする「暴動」を行えば、それによって既遂に達します。
内乱罪も間違いなく「既遂犯」の処罰が規定されているのです。
記事では、
内乱罪は、宿命的に既遂を処罰することができない犯罪なのです。
とまとめられていますが、これは、何かの解説を読んで勘違いしているんだと思います。
内乱罪の保護法益は、国家の存立です。
この国家の存立という法益が現実的に侵害されてしまった場合、(もう国家は存在しないわけですから)暴動をした者を処罰することはできません。
つまり、処罰できなくなるのは、「既遂に達した場合」ではなく「保護法益が現実的に侵害された場合」です。
保護法益の現実的な侵害があった場合に成立する犯罪を「侵害犯」といいますが、内乱罪は、宿命的に「侵害犯として規定することはできない」ということになります。
そのため内乱罪は、法益侵害の危険が発生した段階(ここでは暴動をした段階)で犯罪が完全に成立する「危険犯」として規定されています。
この説明と、既遂犯と未遂犯の話とがごっちゃになっているのでしょう。
危険犯は、危険が発生したときに、既遂になるのです。
決して、未遂犯として規定されているわけではないのです。
犯罪には、
既遂犯と未遂犯
結果犯と挙動犯
侵害犯と危険犯
他にもいろいろとカテゴライズの方法はありますが、それぞれ似て非なるものなので、ごっちゃにならないように注意しましょう。
ま、これを知って役に立つのは、試験前の法学部生くらいだと思いますけどね!
あと、危ないから内乱はやめようね!
では、今日はこの辺で。