以前、行政書士の先生から、こういう質問を受けました。
「司法書士さんって、法定後見に力を入れていて、任意後見はあまり積極的でないと聞きましたが、そうなんですか?」
どこでそういう誤解が生じたのかは分かりませんが、「司法書士は法定後見に積極的で任意後見に消極的」ということはありません。
司法書士会やリーガルサポート(司法書士による、成年後見制度の専門家団体)も、どちらかを推奨していることもありません。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度から成り立っており、一般論として、どちらが優れているとか、どちらが望ましいとかいうものではありません。
それぞれに特徴があるため、法定後見が適切な方もいれば任意後見が適切な方もいます。
任意後見契約は「契約」なので、判断能力の低下が著しい場合(意思能力に疑義が生じるような場合)は、利用できませんし、逆に判断能力が低下していない段階では、法定後見制度は利用できません。
判断能力の低下の度合いや、経済状況、家族関係などなど、高齢の方や精神上の障害を持った方のおかれた状況は様々ですので、どの制度を選ぶかはケースバイケースといえます。
ご本人の事情から判断して、その方に合った制度を利用するので、任意後見に適した方であれば、もちろん任意後見を選択することになります。実際に、私も司法書士として任意後見契約を受任しています。
「司法書士=法定後見」というイメージになるのは、いくつかの理由があるかもしれません。
まず、そもそも法定後見と任意後見では、法定後見の方が圧倒的に件数が多いことが挙げられます。
ざっと100倍くらいの差があります。
絶対数にかなりの差があるので、司法書士が受任するのも法定後見の方が多いわけです。
それから、法定後見に関しては、司法書士は、弁護士・社会福祉士と並んで、家庭裁判所に成年後見人等の候補者名簿が置かれているという事情があります(この3士業による後見人を専門職後見人といいます)。
そのため、司法書士が法定後見を受任する機会も多くなります。
もうひとつ大きな理由が、司法書士は、家庭裁判所に対する後見開始申立書類の作成をすることができるということです(裁判書類作成業務)。
逆にいえば、司法書士以外はこれができないという事情があります。
裁判書類作成業務は、司法書士の独占業務なので、司法書士の資格を持たない人が業務として行うことは犯罪です(弁護士は除く)。
そのため、法定後見を業務として取り組むには、司法書士か弁護士の関与が不可欠なのです(参照→「成年後見制度を利用するには?」)。
つまり、司法書士は、法定後見でも任意後見でも、特に何の制約も受けずに依頼者に提案することができるのに対し、司法書士以外の士業者が法定後見に取り組むには、「申立て」というハードルがあるわけです。
「司法書士以外の士業者」が任意後見に重点を置くことになれば、相対的に司法書士は法定後見を重視しているように見えるのかもしれません。
こんな感じで、司法書士は実際に多くの法定後見に取り組んでいますが、任意後見も別に消極的であるわけではありませんので、任意後見のご相談も、司法書士までどうぞ(宣伝)。
では、今日はこの辺で。
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成年後見シリーズ
第1回「成年後見制度入門」
第2回「法定後見の類型」
第3回「任意後見契約について」
第4回「後見終了後の問題」
第5回「後見人には誰がなるか?」
第6回「成年後見制度を利用するには?」
番外編「成年後見の申立てにかかる費用」
番外編2「成年後見の申立てにかかる時間」
(このほかにも、成年後見についての記事はありますので、右上の検索窓で検索してみてください)
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