2014年6月23日月曜日

無資格でもタダでやるならいいのか?

司法書士の岡川です。

日本には、士業等の資格者のみが行うことができる「独占業務」というものがあります。

登記業務や裁判所提出書類作成業務であれば司法書士の独占業務ですし、税務代理や税務書類の作成は税理士の独占業務、社会保険関係の書類作成は社会保険労務士の独占業務、特許申請業務は弁理士の独占業務、他士業の独占業務となっていない行政庁へ提出する書類作成は行政書士の独占業務、といった具合です。
当事者を代理して紛争処理を行うのは、弁護士の独占業務で、これに違反するのが、いわゆる「非弁活動」というやつです(但し、140万円以下の紛争に関しては司法書士も業務を行えます)。

それぞれの根拠法(司法書士法やら弁護士法など)によって独占業務とされている業務を、無資格者が業務として行うと犯罪となります。

しばしば「事件屋」と呼ばれる人が示談代行をして弁護士法違反で捕まったり、最近では、行政書士が登記業務を行って司法書士法違反で捕まったり、税務署の関係者が脱税の指南をして税理士法違反で捕まったりするニュースがありました。


では、犯罪者にならないためにどうすればよいか。
これについて、こういう記事がありました。

なぜ家系図作成で逮捕?行政書士法とは何なのか
行政書士やその他先ほどお話しした資格が必要な仕事ですが、報酬をもらうことを目的とする場合のみ、資格がないと法律違反となります。
これは間違いです。

独占業務の法律違反になるのは、無資格者が独占業務とされている「業務を行った」場合、言い換えると「業として」行った場合に限られます。
したがって、例えば父親が所有している不動産の登記申請を子供が代わりにしたり、夫の確定申告書を妻が代わりに作成したりするのは、犯罪ではありません。

どういう場合に「業務」を行ったと評価されるかは、「反復継続して」あるいは、「反復継続の意思をもって」行った場合と解されています(最判昭和39年12月11日集刑153号647頁、税理士法基本通達、参照)。
この場合、実際に反復継続するかどうかは問いません。


では、反復継続する意思をもって、無償でやる場合はどうなるでしょうか。
「無償だったら業務じゃない」というふうに考える人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

法律の規定の上で「報酬を得て」することが業務の内容として規定されているもの(行政書士法、弁理士法)や、「報酬を得て」あるいは「報酬を得る目的で」無資格者が業務を行うことが禁止されているもの(弁護士法、社会保険労務士法、公認会計士法等)があります。
これらの場合は、報酬を得て行うことが法律違反なので、逆にいえば報酬を得なければ犯罪にならないということになります。

ただし、上記最高裁判例(司法書士法違反事件)や税理士法の解釈通達にもあるように、上記のような規定でない限り、業務かどうかは、「報酬を得る目的の有無にかかわりなく」判断されます。
つまり、「報酬を得て」ということが、業務の内容、あるいは違反の要件となっていない司法書士法や税理士法上の独占業務については、「タダでやってあげたから業務じゃない」という言い訳は通用しないことになります(土地家屋調査士の業務や、海事代理士の業務も同様)。


つまり、法律でしっかり「報酬を得て」という規定になっていない業務については、タダでやっても犯罪なのです。
また、「報酬」が要件となる場合についても、お金を渡さずとも、何らかの利益を供与すれば、報酬となる可能性があります。


したがって、無資格者は、例えば家族に代わって1回きりの手続をするような場合を除き、専門的な手続を他人の代わりにやることは避けるのが安全です。
「タダなら大丈夫ってネットに書いてたから」といって安心して、犯罪者にならないようご注意ください。

では、今日はこの辺で。

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