2014年7月3日木曜日

内容証明の使い方

司法書士の岡川です。

「内容証明」という言葉を聞いたことはありますか?
法的なトラブルが発生したとき、とりあえず「内容証明を出す」というのが常道のように思われるかもしれません。

「内容証明」というのは、普通郵便とか書留郵便とかの郵便の一種である「内容証明郵便」で出す手紙をいいます。
内容証明郵便とは、その名の通り、差し出した書面の「内容」を郵便局が「証明」してくれる「郵便」です。
ただし、ここで証明されるのは、「こういう内容の書面が送られた」という事実であり、その内容自体が正しいことまで証明してもらえるわけではありません。
また、通常は配達証明付で送るので、きちんと到達したことも証明されます。
つまり、「こういう内容の書面が、何月何日に誰から誰に送られた」ことが後から証明できるわけです。

そこで、「そんな郵便受け取ってない」とか「郵便は受け取ったが、そんな内容は書いてなかった」という反論を防ぐ手段として使われます。
相手方にこちらの意思が確実に到達したことを証明する必要がある場合、例えば催告書や解除通知、クーリングオフの通知なんかを送る場合は、内容証明が役に立ちます。

さらに、わざわざ、「きちんとこの内容をあなたに伝えましたよ」と証明された文書を送るわけですから、副次的にこちらの「本気度」を伝える手段にもなります。
それに加えて、それが代理人の司法書士や弁護士の名前で職印を押して送られて来たら、観念して借金を返してくることも期待できます。

このような副次的な効果をメインに考えて内容証明を使う方も多く、実際に、内容証明がきっかけでトラブルが解決することもあるのですが、あくまでも、郵便物の一種であって、それ以上に何か法的な意味のある書面ではないことに注意が必要です。
後で証拠として使いやすいという点を除けば、所詮は「手紙」なのです。


例えば、代理人名義で相手に通知を送る場合、別にあえて内容証明郵便でなくても、普通郵便(特定記録くらいは付けるでしょうが)で十分な場合も多々あります。


副次的効果を狙った内容証明の利用も別に構わないのですが、あまり深く考えずに出して、かえって逆効果になることもあるので注意が必要です。
典型的には、まだ交渉の余地があるような場合に、いきなり内容証明を出して相手を刺激し、「こんなもんを出してきやがって!」と怒らせてしまうパターンですね。
「なんか法律的に正式な文書(っぽいもの)を送ってきた」ことが逆効果になるわけです。

怒らせないまでも、完全に黙殺されることもあります(郵便代の無駄遣いです)。

また、例えばこちらに確実な証拠もなく、また相手方に資力もないような場合に、何百万円という請求をする内容証明だけ送っても、何の意味もありません。
その後に、何らかの法的手続を見据えているなら別ですが。

司法書士や弁護士のような専門家に頼めば、まず内容証明を出すべきかどうかの検討から入るはずですが、専門家でもない人(例えば、無料でトラブル相談に応じているような団体の人ら)に頼むと、安易に「とりあえず内容証明を出す」ということをされる場合があります。
「内容証明」というものの存在、書き方は知っていても、それがどういう意味を持つかに無頓着だと、話がこじれるか何の解決にもならないかのどちらかになりかねません。


本当に内容証明を考えるような状況であるとすれば、そのあとの交渉や法的手続も必要になってくるのですから、不用意に出す前に、最初から専門家(司法書士か弁護士)に相談することをお勧めします。


では、今日はこの辺で。


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