2013年5月19日日曜日

「文書」のあれこれ

司法書士の岡川です。

我々司法書士は、文書作成の専門家です。
公正証書の話をしましたが、ついでなので文書ネタを続けます。

「文書」には、いろんな種類がありますので、それぞれの違いをご紹介しましょう。

1.公文書と私文書
国や地方公共団体の機関や公務員が職務上作成した文書のことを公文書といいます。
それ以外の文書を私文書といいます。
公務員が作成した文書であっても、職務上作成したものでなければ私文書なので、私文書を「私人が作成した文書」と定義してはいけません。


2.公用文書と私用文書
公文書や私文書と似ていますが、それとは別の概念です。
公用文書とは、「公務所の用に供する文書」の意味です。公務所が使用するものであれば、私文書であっても公用文書になります。
例えば、証拠として公務所に保管されている私文書も公用文書ですね。
私用文書はその逆で、公文書と私文書とにかかわらず、公用の文書以外の文書です。


3.原本と謄本と抄本
原本と謄本は、オリジナルとコピーの関係です。

原本…作成者が確定的なものとして最初に作成した文書です。要するにオリジナルの文書を原本といいます。
謄本…原本の全部について、原本と同一の内容を写しとった文書です。要するにコピーですね。
抄本…原本の一部について、原本と同一の内容を写しとった文書です。一部のコピーです。

ちなみに、司法書士が単に「謄本」といった場合、「え?何の謄本?」とか聞かなくても、だいたい登記簿謄本のことを指していますね。
(たまに戸籍謄本のことだったりします。)


4.正本とは何か?
「正本」には2つの意味があります。

まず、謄本(原本のコピー)のうち、法令の規定に基づき、権限のある者によって特に正本として作られる文書のことを「正本」といいます。
これはコピーでありながら原本(オリジナル)と同一の効力を有します。
例えば、判決原本は裁判所が保管しておくものなので、当事者には渡されませんが、その代わりに判決正本が送達されます(判決正本の最後には「これは正本である」と書かれた紙がついています)。
強制執行などは、この正本を使います。

もうひとつの意味の「正本」は、「副本」の対義語です。
これは、メインとサブの関係ですね。
全く同じ文書を2部作る場合、メインで使う方を「正本」といい、メインじゃない方を「副本」といいます。
副本は謄本と違ってコピーではありません。
あくまでも、オリジナルが最初から2部作られている場合に、主たる目的以外に使うために作られた方を副本と呼ぶのです。

例えば、訴状を出すときは、最初から同じものを2部作って、一方を「正本」として裁判所用に提出し、もう一方を「副本」として相手方に送達する用に提出します。


では、今日はこの辺で。

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