2013年7月31日水曜日

法人入門

司法書士の岡川です。

法律上、「人」には「自然人」と「法人」の2種類があります。
「自然人」というのが、一般的な意味での「人」つまり「人間」のことで、自然人は生まれながらにして「人」です。
これに対し、「法人」という概念があります。
法人は、自然人以外で法律上「人」としての地位(法人格)を与えられ、権利義務の主体となりうる存在をいいます。
つまり、その存在自体が、人間(自然人)と同じように、法律関係の当事者になることができるのです。

例えば、株式会社は、会社法3条により法人とされています。
株式会社の実体は、その構成員(株主)の集まりです。
「法人」という法技術が存在しなければ、会社が事業を行うにしても、会社自体がその主体となることができないので、例えば、事業のために何か物を買おうとしても、「会社が物を買って、会社の所有物になる」ということが観念できないことになります。
そうすると、構成員たる株主全員が取引相手から物を買って株主全員の共有物とするか、あるいは誰か代表を決めてその人が物を買い、その人の持ち物とすることになります。
法人制度の存在を前提とすれば、法人である株式会社自体が権利義務の主体となるので、株式会社名義で土地を購入したり売却したり、株式会社名義でお金を借りたり、株式会社名義で税金を納めたり、といったことができます。

法人は、各種の法律に基づいて設立されるのですが、色んな種類があります。
株式会社、合同会社、相互会社、公益社団法人、特定非営利活動法人、一般社団法人、医療法人、学校法人、司法書士法人、社会福祉法人、宗教法人、農業協同組合、商工会議所、国民健康保険組合…
これらはいずれも法人の種類であり、そのごくごく一部です。

見落としがちですが、都道府県や市町村なんかも法人です(地方自治法2条)。
また、日本という国も法人です。
実は、国が法人であることは、どの法令にも明記されていませんが、当然の前提であると考えられています。

ところで、商品やサービスを提供している企業が、「個人向け」「法人向け」といったふうに顧客を分類していることがあります。
パソコンとか携帯電話とか、あるいは通信サービス等もそうですね。
ここでいう、「個人」と「法人」の区別は、正確には「一般消費者」と「事業者」の区別に対応しているのだと思われます。
つまり、個人事業主は、通常「法人向け」のサービスが適用されるように思います。
「法人」にそういう意味は無いので、この「法人」の使われ方には、ものすごく違和感を覚えます。
いくら企業であっても、法人格がなければ「法人」じゃないのですから。

私の事務所は個人事業主なので、法人向けのサービスを説明されたりするときは、一応「うちは法人じゃないんですけど」と確認しています。
法律用語は正しく使いましょう。

では、今日はこの辺で。

続きはこちら→公法人と私法人

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