誤認逮捕された男性会社員について、検察が公訴を取り消し、裁判所が公訴を棄却しました。
誤認逮捕:地検支部長、起訴取り消しの男性に謝罪 大阪(毎日新聞)
窃盗事件を巡る大阪府警北堺署の誤認逮捕問題で、大阪地検堺支部は30日、窃盗罪の起訴を取り消した男性会社員に謝罪した。
事件の概要は、ガソリンカードが盗まれ、そのカードで給油がされた様子が防犯カメラに映っていたとして、男性会社員が逮捕されたが、防犯カメラの時刻が大幅にずれていた為、その会社員のアリバイが成立したというもの。
誤認逮捕であり、誤認勾留でもあり、誤認起訴でもあります。
その後の流れとして、検察は公訴を取り消しました。
新聞報道はどれも「起訴の取り消し」となっていますが、刑事訴訟法的には、正確には「起訴」を取り消したのではなくて「公訴」を取り消したのです(刑事訴訟法257条)。
「公訴」とは、簡単にいえば刑事事件において処罰を求める訴えのことです。
犯罪の疑いがある者について、公訴を提起することができるのは、原則として検察官だけです。
そして、一審判決前であれば、検察は、公訴を取り消すことができます。
起訴というのは、刑事訴訟においては、「公訴の提起」のことです。
余談ですが、民事訴訟においても「訴えの提起」のことを「起訴」という場合がありますが(「起訴前の和解」など)、訴えの提起は一般的に「提訴」といいます。
今回検察は、「こいつが犯人だ」と思って起訴したものの、間違いであることが分かったので、刑事手続をこれ以上続けることは適当でないと判断し、公訴を取り消したようです。
ただし、公訴が取り消されると、自動的に裁判手続が打ち切りになるわけではありません。
検察の公訴取消を受けて、裁判所が公訴を棄却します。
これでようやく、手続きが終了します。
公訴棄却は、有罪か無罪かを判断することなく、訴訟手続を打ち切るという裁判です。
つまり、公訴を取り消されてしまうと、終局的に「無罪」という判断が出ずに終わってしまうことになります。
有罪を宣告されない限りその人は有罪ではない(「無罪の推定」も参照)ので、公訴棄却決定だろうが無罪判決だろうが、無罪であることに変わりはないのですが、どっちが被告人のためになるかというと、裁判所に「無罪」と判断してもらう方が被告人のためになります。
したがって、被告人は、無罪判決を求めていたわけですが、検察は、裁判所に無罪判決を求めることなくフェードアウトという道を選びました。
この辺の裏事情がどうなっているかはわかりませんが、散々裁判に付き合せたのだから、堂々と無罪判決に持って行くべきでした。
まあ、ともかく、弁護人の働きで冤罪が回避できた点は良かったですね。
では、今日はこの辺で。
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