司法書士の岡川です。
明らかにネタにする順番としては逆なのですが、一般刑法と特別刑法の話をしたので、もっと大きな概念として、「一般法」と「特別法」のお話。
一般法というのは、ある法律と他の法律と比べたときに、より適用範囲が広いものをいいます。
それに対し、特別法は、他の法律と比べて適用範囲が限定されているものをいいます。
両者は相対的な概念であり、「ほげほげ法は、一般法である」とか「ふがふが法は特別法である」といったように絶対的に決まっているものではなく、「ほげほげ法は、ふがふが法の特別法である」のように、相対的に決まるものです。
例えば、前回までに書いていたとおり、今度制定される「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」というのは、刑法の特別法です。
逆にいえば、刑法(刑法典)というのは、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に対する関係で一般法ということになります。
刑法は、およそ犯罪に関する場面で「一般」的に適用されるのに対し、「自動車(略)法律」は、自動車の運転という「特別」の場面でのみ適用されるものです。
他の例を挙げると、商法というのは、会社法の一般法です。
会社法は、「会社」にのみ適用される法律ですが、商法はもっと広く会社以外の商人とか商行為に適用されます。
ただその一方で、商法は、民法の特別法でもあります。
商法が商行為や商人に関する私法上の関係を定めるのに対し、民法は、商人や商行為に限らず、もっと広く一般に私法上の関係について規定したものだからです。
この民法より広い範囲で適用される私法は存在しないので、そのことをもって、「民法は私法の一般法である」というようにいわれています。
特別法というのは、限定的な場面に応じて、一般法を修正するものです。
したがって、特別法と一般法で異なる内容のことが書かれていれば、それは特別法が優先されます。
これを「特別法優先の原則」といいます。
例えば、民法によると、法定利率は年5%とされています(民法404条)。
これに対し、商法541条には、「商行為によって生じた債務」の法定利率は年6%と規定されています。
この場合、「商行為によって生じた債務」という限定された範囲では、特別法である商法の規定が優先することになります。
規定レベルでいえば、「特則」といういい方もします。
「商法541条は、民法404条の特則」のように。
法律には、いちいち、「この法律(規定)は、この法律(規定)の特別法である」とは書いていませんから、法律を適用する際は、特別法(特則)がないかを調べることが大切なのです。
では、今日はこの辺で。
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