2013年11月25日月曜日

自動車保険の仕組み(加害者側の保険)

司法書士の岡川です。

自動車保険の分類は色々ありますが、「誰の損害を補償するのか」という観点から分類すれば、「加害者側」の保険と「被害者側」の保険に分けることができます。

加害者側の保険は、「(賠償)責任保険」というものです。

他人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負います(民法709条)。
これは、交通事故の場合も例外ではなく、むしろ、自賠法によって交通事故の場合の責任は民法より加重されています。
そして、損害賠償として相手に支払う金額は、加害者にとっては「損害」といえます。
損害賠償として1億円を被害者に支払ったら、加害者は1億円の損害が出ていますね。
この損害は、自分が引き起こした事故が原因ですので、ある意味自業自得ではありますが、そうであっても、損害は損害です。

この「他人に賠償したことで生じた損害」を補償する保険が賠償責任保険(保険法の用語でいうと、「損害保険」の一種である「責任保険」という類型)です。
前回書いた自賠責保険も、加害者側の賠償責任保険ですし、どの任意保険の商品も、賠償責任保険が中心になっています。

「損害賠償として支払った金を保険会社に出してもらう」ので、お金の流れは、

加害者 → 被害者

保険会社

なのですが、保険会社から被害者に直接支払うこともできるようになっています。


賠償責任保険の中でも、補償対象に着目すれば、大きく分けて2種類あります。

まずは、対人賠償責任保険。
これは、傷害、後遺障害、死亡による損害について、賠償金を支払った際に補償されます。
前回も書いた通り、自賠責からも支払われますが、自賠責には支払限度額が低く設定されています。
そこで、任意保険の対人賠償保険は、自賠責で補償される額の上限に上乗せして、自賠責保険では補償されない部分について支払われるものだということになります。
例えば、死亡に対する損害が1億なら、3000万円は自賠責から支払われますが、残りの7000万円を任意保険の対人賠償責任保険が補償してくれることになります。

それから、対物賠償責任保険。
これは、自賠責の対象外になっている物損について支払われます。
被害車両の修理代などですね。
被害者の自動車の修理代100万円の賠償責任を負ったら、その分は自賠責では1円も補償されず、任意保険で保障されるわけです。


ここまでが、加害者側の保険です。
加害者視点でいえば、「相手に支払う賠償金を補償してもらう保険」であり、被害者視点でいえば、「相手から支払ってもらう保険」です。


次に、被害者側の保険…といきたいところですが、長くなったので続きは次回。

では、今日はこの辺で。

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