司法書士の岡川です。
今日は、いわゆる「自動車保険」の仕組みについて書いていこうと思います。
自動車保険には、「自動車損害賠償責任保険」(自賠責保険)と「任意保険」があります。
自賠責保険は、「強制保険」ともいわれ、自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき、自動車を運転する場合は、強制的に加入が義務付けられている保険です。
これに対し、加入が強制されておらず、各人が自分の判断で任意に保険会社と契約するのが任意保険です。
自動車の運転というのは、大きな危険を伴うものです。
そのため、もし事故で他人に損害を与えたとしても、被害者に対する最低限の賠償が保障されるようにするための制度が必要になります。
自賠責保険は、その名の通り、他人に損害賠償をした場合に、(原則的には加害者に対して)保険金が支払われるというものです。
そして、この保険は、自動車を運転する以上は必ず加入しなければならないことにして、賠償金が1円も支払われないという事態を防止しています。
したがって、加害者が暴力団であったとしても、少なくとも自賠責保険の補償額については確保できることになります(前回の記事参照)。
お金の流れとしては、
加害者 →(賠償金)→ 被害者
↑
(保険金)
↑
保険会社
のような感じです。
ただし、被害者救済ということで、被害者が保険会社に直接請求することも可能です(これを被害者請求といいます)。
保険法における保険の分類でいえば、「損害保険」のうちの「責任保険」に該当します。
自賠責の加入義務があるのは、「自動車」です。
ここには、バイクや原付も含まれるのですが、エンジンを積んでいない乗り物は含まれません。
なので、自転車、三輪車、一輪車、人力車、馬車、牛車、籠、肩車、ベビーカー、馬、ロバ、牛、象、ダチョウ、etc...なんかに乗って公道を走る場合、自賠責保険に加入する必要はありません。
自賠責保険は、最低限の保障なので、保険金が支払われる範囲も限定的です。
被害者が怪我をした場合、後遺障害が認定されなければ、保険金の上限は120万円です。
後遺障害が認定されると、等級に応じて上限が上乗せされます。
例えば、後遺障害等級14級であれば、上乗せ分は75万円です。
死亡事故の場合であっても、死亡による損害に対する支払限度額は3000万円です。
死亡事故などでは、損害賠償額は1億を超えることもあることからすれば、自賠責で保障されるのは、損害のごく一部であることがわかります。
自賠責で支払われる以上の損害を相手に与えた場合、加害者自身はもちろんその賠償責任を負います。
相手に1億の損害を与えて、自賠責から3000万円が支払われたら、残りの7000万円は加害者が自分でどうにかするしかないわけです。
また、自賠責には「対物賠償」というものはありません。
自賠責で保障されるのは、傷害、後遺障害、死亡に対するものに限られ、例えば、自動車の修理費用などは自賠責からは支払われません。
この場合も、被害者の修理費用は、加害者が自腹で支払う必要があります。
そこで、自賠責で支払われない部分(物損の賠償や、自賠責の支払限度額を超える賠償額)についても、保険で補償しようというのが、各人が任意に加入する「任意保険」です。
任意保険には、いろんな会社(損害保険会社)から色んな商品が出ているので、その補償内容も多種多様です。
任意保険に加入されているのであれば、約款に詳しく書いてありますので、「どこまで補償されるのか」は、きちんと把握しておきましょう。
では、今日はこの辺で。
「自動車保険の仕組み」シリーズ
・自賠責保険と任意保険 ← いまここ
・加害者側の保険
・被害者側の保険
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