2014年5月7日水曜日

「審判」いろいろ

司法書士の岡川です。

「審判」といえば、一般的にはスポーツなどで判定を行う人のことを指すと思いますが、法律用語としての審判は、もちろんそれとは異なります。
そして、法律用語としての審判には色んな意味があります。

まず、行政機関が裁判手続に準じる手続(準司法手続)に基づいて法令を適用して決定を行う手続です。
これは、「行政審判」といわれます。

特許庁で行われる特許無効審判などの審判や、海難審判所で行われる海難審判などがこれに該当します。
公正取引委員会も独禁法に基づく審判手続を行っているのですが、この制度はもうすぐ廃止されます(改正独禁法が成立しており、これが施行されたら廃止です)。

なお、行政審判における行政機関の判断は、形式的には裁判所が行う「裁判」ではないため、個別の法律の規定に従って「審決」や「裁決」などとよばれます。
これらも実質的意義においては「裁判」に含めることもできるのですが、「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」という憲法76条の制約により、行政審判の結果に不服がある場合は、司法機関である裁判所へ出訴する道が残されています。


それから、家事事件手続法に基づく家事審判の手続において、家庭裁判所がする判断も「審判」といいます。
こちらの「審判」は、「裁判」といえるものとそうでもないものが含まれています。

家庭裁判所が行う審判としては、少年法に基づく少年審判も「審判」といいます。
ただし、少年法での「審判」は家事審判とは異なり、家庭裁判所で行われる少年事件の審理手続のことを「審判」といい、少年審判における裁判所の判断自体は、「決定」という裁判形式でなされます。


通常の訴訟手続においても「審判」という語が使われることがあります。
この場合の「審判」とは、「審理と裁判」のことです。
つまり、手続全体を「審判」といいます。

(追記)
そうそう、忘れていました。
労働審判というのもありました。
労働問題に関して、労働審判法に基づいて行われる審判で、訴訟よりも簡易な審理(労働審判手続)を経て「労働審判」がされます。
ここでの「審判」は、家事審判と同じく裁判所の判断の意味です。(追記以上)


このように「審判」という語は、手続のことを指したり、行政機関や司法機関の判断のことを指したり、その全体を指したり・・・と、分野によって色んな意味で使われるのです。

ややこしいですね。


では、今日はこの辺で。

この記事が「面白い」「役に立つ」「いいね!」「このネタをパクってしまおう」と思ったら、クリックなどしていただけると励みになります。
↓↓↓↓↓

※ブログの右上に、他のランキングのボタンもあります。それぞれ1日1回クリックできます。

0 件のコメント:

コメントを投稿