2014年6月10日火曜日

ノーワーク・ノーペイの原則

司法書士の岡川です。

当たり前といえば当たり前なのですが、賃金(給料)というのは、働かなければもらえません。

会社に雇われている人が、何らかの事情(病気や怪我等)で出勤できなかったり、無断で仕事をサボったりして、労働しなかった場合、その分の賃金は発生しません。

これを、「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます(pay=賃金)。
「働かざる者食うべからず」をちょっと今風にカタカナ語でいってみた感じですね。


自分自身が原因で働いていない場合(自ら休暇をとった場合、遅刻、サボり等)に対価である賃金をもらえないのは当然ですが、必ずしも自分のせいでない事情によって働けない場合についても(例えば、電車が止まって職場に行けなかった場合や、休みの日に交通事故にあって入院した場合など)、この原則は妥当します。
その実定法上の根拠としては、民法第536条1項の「危険負担」の規定です。

危険負担とは、債務が履行されない場合に、その不利益を債権者と債務者のどちらに負担させるかという問題なのですが、民法536条は、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。」という原則を規定しています。

労働債務の債務者が労働者で、反対給付とは、その労働の対価である賃金になりますね。

つまり、不可抗力によって労働できない場合なども、賃金をもらえないということです。

他方、働けない原因が会社側にある場合は、働かなくてもお金をもらえます(民法第536条2項の反対給付請求権や、労働基準法26条の休業手当規定)。
いくらもらえるかは、事情によります(民法が適用される場合か、労働基準法が適用される場合かによっても異なる)。


それから、年次有給休暇というのは、ノーワーク・ノーペイの例外です。
有給休暇を使って休んでいる分に関しては、休んでいてもお金をもらえます。
これは労働者の権利として保護されています。

なお、労働契約で、「働かなくても一定額の給料をあげる」という契約をすることは別に構いません。


では、今日はこの辺で。


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