2014年6月9日月曜日

暴行と傷害の違い

司法書士の岡川です。

「暴行」と「傷害」、どちらも犯罪であることに変わりありませんが、暴行罪と傷害罪では犯罪類型が異なります。
同じようなもんだろうと思われるかもしれませんが、きちんと違いがあるのです。


暴行罪というのは、「不法な有形力の行使」を内容とする犯罪です。

典型的には、殴ったり蹴ったり投げ飛ばしたり、というのがこれにあたりますが、石を投げつけたり、水鉄砲で水をかけたり、塩を振りかけたりするのも、場合によっては暴行罪が成立します。
けっこう範囲の広い犯罪ですが、その代わり比較的軽い類型になっています(最高でも懲役2年)。

ただし、暴行によって相手が怪我をした場合、傷害罪が成立するので、法定刑も最高で懲役15年まで跳ね上がります。
比較的軽い暴行罪で済むのは、相手が怪我をしなかった場合に限られるのです。


傷害罪というのは、人を傷害した場合に成立します。

一般的には、暴行によって相手が怪我をした場合、というのが考えられますが、暴行によらない傷害というのもありえます。
例えば、毒物を混入して相手の体調に異変を生じさせたら、傷害罪ですね。


暴行罪には、未遂犯処罰規定がありません。
すなわち、「暴行未遂」では、犯罪は成立しません。

他方、「傷害未遂罪」という犯罪は存在しませんが、傷害の未遂は暴行罪が成立する可能性があります。
これは、有形力の行使の結果としての傷害が、未遂に終わった場合の話です。
ただし、「暴行によらない傷害」の未遂を処罰する規定は存在しません。
「毒物を混入したが相手がそれを飲まなかった」という場合には、暴行罪は成立しませんし傷害未遂罪も存在しません(その他の特別法上の犯罪が成立する可能性はあります)。


それから、過失の場合、「過失暴行罪」という犯罪は存在しませんが、「過失傷害罪」というのは存在します。

「殴るつもりはなかったのに、間違って殴ってしまった」という場合、相手が怪我をしなければ無罪です。


このように、ある行為が暴行なのか傷害なのかで大きく結論が異なってきますが、「何をもって傷害というか」は、見解が分かれています。
例えば、「無理やり相手の髪の毛を切る行為は傷害か」という議論です。

この点、判例・通説では、髪の毛を切っても傷害にはならないと解されています(生理的機能障害説)。
他方、無理やり引き抜いたら傷害罪が成立する可能性があります。


なお、いうまでもありませんが、犯罪が成立しない行為であっても、違法なものは違法なので、不法行為が成立する可能性はあります。
ご注意ください。

では、今日はこの辺で。


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