2014年8月27日水曜日

法的三段論法

司法書士の岡川です。

「三段論法」というものをご存じでしょうか。
これは、 「大前提、小前提、結論」の三段階で結論を導く論理の形式です。

抽象的にいうと、

大前提:MならばPである。
 ↓
小前提:SはMである。
 ↓
結論:SならばPである。

という具合に、三段階で結論を導くのが三段論法です。

ここで「大前提」は、普遍的な原理や一般的に妥当する命題(例:生き物は皆死ぬ)です。
そして次の「小前提」は、個別の事実(例:カピバラは生き物である)です。

大前提と小前提から、一定の具体的な結論(例:よって、カピバラは皆死ぬ)を導くことができるわけです。

ちなみに、「AならばB、BならばC、よってAならばC」でも論理的に間違いではないのですが、この場合、「小前提→大前提→結論」の順になっているので注意が必要です。


ここまでが、一般的な三段論法の話。

法律家が日々おこなっている、法の解釈と適用という作業も論理の問題なので、やはり三段論法というものが重要になってきます。

法の適用の場面における論理形式を、特に「法的三段論法」といわれます。

“法的”三段論法とは、規範に事実を当てはめて結論を導くものです。
論理の形式自体は普通の三段論法と同じですが、法的三段論法では次のようになっています。

まず、大前提には、必ず「法規範」を置きます。
仮に、民法882条の規定(相続は、死亡によって開始する)を置きましょう。
「死亡」という法律要件を満たせば、「相続」という法律効果が生じるという規定です。

次に、小前提は、個別の事実です。
実際に問題となっている事象(例:団藤重光博士は平成24年6月25日に亡くなった)ですね。
あ、ちなみに団藤重光博士というのは、超有名な刑法学者です。

そして、個別の事実を規範にあてはめることで、法的な結論が導かれるわけです。
上記からは、「平成24年6月25日、団藤重光博士の相続が開始した」という結論です。


これで、具体的事実と、そこから生じる法律効果が結び付けられるということになります。
実際に法を適用する場面での思考の順序としては、まずは具体的な事実(小前提)の存在から始まって、そこから抽象的な規範(大前提)に辿っていくことになります。

何かを主張したいとき、三段論法を意識するだけでも、論理的に筋が通って説得的なものになります。
「法的にどうか」ということを言いたければ、必ず「大前提→小前提→結論」が無理なく導くことができなければなりません。
法律論としてに無茶苦茶なことを言っている人は、大前提が抜けてたりするんですよね。

基本的なことではありますが、非常に重要なことですので、覚えておくとよいでしょう。

では、今日はこの辺で。

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