2014年8月27日水曜日

実は適法な「実は違法行為」とされる行為

司法書士の岡川です。

「実はこれって違法なんだぜ」と紹介される行為も、根拠が不明であったり、法律を誤解していたり、法律の一部を見て一般化していたりと、不正確な情報が多いものです。
ま、専門外の人が紹介する雑学って、えてしてそんなもんですよね。

今日はそんなお話。

知らないと犯罪者に!? 意外な違法行為

「意外な違法行為」のランキングが紹介されています。
「知らないと犯罪者に!?」とある以上、「違法行為」というのは、刑罰法規に違反する行為のランキングかと思いきや、実は単なる不法行為とかも紛れていて、結構適当です。

このランキングの中から、結論や解説に疑問があるものをピックアップしてご紹介します。


1位:並んでいる列に割り込みする

イキナリ嘘です。

解説で「軽犯罪法第1条第13号に記されている」とありますが、軽犯罪法1条13号の規定は「威勢を示して」割り込みをすることを禁じています。

単なる割り込みは違法ではありません。
「違法」という評価は、法律に規定された要件をすべて満たした行為に対するものです。

「未成年者が飲むことをわかって酒を売る行為」は違法ですが、単に「酒を売る行為」は違法ではないのと同じです。

どこかの地域の条例なんかでは、単なる割り込みも禁止されているかもしれませんが。


2位:タクシーの中で吐く

よくわかりませんが、これが「嘔吐してタクシーを汚す」ことが「不法行為に該当する」という意味であれば、確かに違法行為といえば違法行為です。
ただ、それをいうならば、電車の中でもバスの中でも学校の中でも会社の中でも他人の家の中でも、「吐いたら違法」ということになります。

解説には「「契約違反」となり賠償請求される」とありますが、どういう契約か不明です(少なくとも一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款には、「タクシーの中で吐いてはならない」という契約条項はありません)し、契約違反というよりは不法行為だと思われます。
謎です。


8位:電柱・電信柱に登る

これもよくわからないですね。
解説によると、「登るには「電気主任技術者」という国家資格が必要」というが、何法の何条に規定されているのでしょうか。
電気事業法にはそれっぽい規定は無さそうだし…。


9位:新年会や歓迎会で無理に飲ませる

微妙ですが、少なくとも解説は間違いです。

確かに 酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律には、「飲酒を強要する等の悪習を排除」と明記されていますが、これは「悪習を排除」するという責務について定めているだけです。
同法は、酒に酔って迷惑行為をする者を罰する法律です。
本質的な問題としては、「無理に飲ませる」というのが、脅迫や暴行を用いた場合であれば、刑法の強要罪に該当する可能性があります。


14位:     決闘に応じない相手を侮辱する

これも、違法になるには色々な前提条件を付けなければなりませんし、解説の「名誉棄損罪で処罰される」というのは疑問です。

例えば、公衆の面前で相手を侮辱したりすれば、侮辱罪が成立する可能性があります。
さらに、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」すれば名誉棄損罪が成立する可能性がありますが、「決闘に応じなかった」という事実の適示で名誉を棄損するとは考えられませんので、名誉棄損罪というのは成立しにくいだろうと思います。

他方で、どんなに相手に「弱虫」だの「チキン」だの「腰抜け」だのと相手を侮辱しようが、それが1対1のときに言った場合には、侮辱罪は成立しません。


ネット上に転がっている法律雑学ネタは、鵜呑みにせずに根拠条文を調べるようにしましょう。

では、今日はこの辺で。


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