2014年12月18日木曜日

後見人による不動産の売却

司法書士の岡川です。

後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)は、その代理権の範囲内で本人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)の財産を管理し、処分することができます。
後見人等は、法律で権限を認められた代理人(法定代理人)ですから、権限を濫用したり権限外のことを行わなければ、財産の管理処分は、法定代理人の判断にゆだねられています。
代理人にある程度の裁量がなければ、代理人の意味がありませんからね。
ただし、後見人等は、本人の意思の尊重義務を負っていますから、あくまでも本人の(利益の)ために行動します。


ですから、大きな財産の処分、例えば不動産を売ったり、株式を売却するような場合も、(法律の建前上)原則として本人や裁判所の了解を得る必要はありません(「代理権の範囲内にあれば」の話ですので、保佐人や補助人の場合、その処分を行う代理権があることが前提です)。
もちろん、その処分が不適切だった場合は、善管注意義務違反に問われる可能性がありますので、実務的には、大きな財産の処分をする前には、裁判所と相談したり、本人の意思を確認したりはしますけどね。


ところが、原則として後見人等に任せられているといっても、後見人等の判断のみには委ねられていないものがあります。
それが、「居住用不動産の処分」です。

後見人等が居住用不動産を処分する場合には、必ず家庭裁判所の許可が必要です。
そのため、居住用不動産を売却した場合の移転登記(名義の書き換え)には、裁判所の許可証(審判書)を提出しなければなりません。
(なお、専門的なことをいうと、登記原因証明情報にも、居住用不動産であることと、許可を得たことを記載します)


「居住用不動産」とは、本人が現に住んでいる家であったり、今は施設に入所しているけど以前住んでいた家などを指します。
「処分」というのは、売ったり、誰かに貸したり、抵当権を設定(担保に入れる)したりすることです。

居住用不動産の処分だけは、広範な代理権が認められている成年後見人であったとしても、その単独の判断に任せると本人の不利益になる可能性があるので、裁判所が慎重に検討したうえで結論を出すことになっています。
そして、本当に本人の意思に沿う処分なのかを、裁判所がチェックすることになります。

例えば、「本人の介護費用を捻出するために既に住んでいない家を売る」といった正当な理由があれば許可されるでしょう。


後見人は、常に、「本人の判断能力が正常であったならば、どういうことを望むか」を考えて行動しなければなりません。
なかなか難しいことなのです。

では、今日はこの辺で。


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