2015年1月6日火曜日

民事も刑事も「自白」は慎重に

司法書士の岡川です。

「自白」というのは、一般的なイメージとしては、カツ丼の誘惑に負けて「私がやりました」と罪を認める供述をすることだと思われるかもしれません。
もちろん、そういう意味(カツ丼は除く)もあるのですが、自白はなにも犯罪者が行うものとは限りません。

1.刑事訴訟法上の自白

一般的にイメージされる自白は、刑事手続におけるものです。
犯人(被疑者や被告人)が、自分の犯罪事実を認める供述です。

犯人が認めちゃっているわけですから、他の証拠よりも信用性が高く、「自白は証拠の女王」といわれています。
何で「女王」なのかは分かりませんが、とにかく女王と呼ばれています。

ありのままの自分だからですかね。

ただ、自白偏重の捜査が冤罪を生むというのもまた事実であり、憲法38条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない」と定めています。
刑訴法319条1項にも同様の規定(「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない」)があり、自白の証拠能力(証拠として採用できるかどうか)に一定の制限を設けています。
これを、「自白法則」といいます。

また、憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定し、刑訴法319条2項も「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない」と規定しており、「自白のみ」で被告人を有罪にすることはできないことになっています。
これを補強法則といいます。

自白が強力な証拠である分、その取り扱いは慎重でなければならないということです。


2.民事訴訟法上の自白

実は、民事訴訟においても「自白」というものがあります。
民事訴訟法上の自白は、自己に不利益な事実を認めることをいいます。

例えば、原告が「何年何月何日、被告に100万円貸し付けた」と主張したことに対し、被告がその貸付けの事実を認めることを「自白」といいます。
被告としては、貸付けの事実を認めたうえで「でも何月何日に返した」という反論(これを抗弁といいます)をして原告の請求を争うことができます。

民事訴訟法上の自白は、裁判所の認定を拘束します。
「裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない」(民訴法179条)とされているので、自白が成立すれば、裁判所は何の証拠もなくその事実を認定する(認定しなければならない)ことになります。
刑事訴訟と違って、民事上の紛争は当事者間の問題なので、当事者が認める事実をそれ以上慎重に審理する必要はありません。
したがって、補強証拠なども一切必要とされません。

自白には、積極的に「認める」と述べた場合のほか、積極的に争わなかった場合も成立することになります。

認めるなら認めると述べる(自白)。
認めないなら認めないと述べる(否認)。
知らないなら知らないと述べる(不知)。

そのいずれでもない態度をとった場合(これを「沈黙」といいます)、認めた(自白した)ものとして扱われるのです。
これを「擬制自白」といいます。

訴えられた被告が答弁書も出さず、法廷にも出てこない場合、原告の主張を争わなかったということになります。
その場合は、全面的に擬制自白が成立し、原告全面勝訴の判決が出ることになります。

いわゆる「欠席裁判」というのはこういうことです。
欠席裁判では、全面的に被告が認めたことになるので証拠すら必要ないのです。


犯罪を疑われた場合、本当にやっていないときは自白してはいけません。
なんせ自白は証拠の女王ですから、あとから撤回することは大変です。

そして、民事で誰かに訴えられた場合、無視してはいけません。
無視すると、全面的に認めたことになりますから、面倒でも何らかの対応をしましょう。

擬制自白が成立し、控訴期間が経過すれば、真実がどうであろうが、法的には原告の主張通りの事実が認められます。

裁判所から何か書類が届いたら、まずは司法書士に相談しましょう!(久しぶりの宣伝)


では、今日はこの辺で。


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