2015年6月9日火曜日

訴状を受け取らないとどうなる?

司法書士の岡川です。

民事の訴えを提起するときは、必ず裁判所に「訴状」を提出して行います。

実は簡易裁判所では口頭でも訴えを提起することは可能なのですが、実際には、雛型(チェック方式になってたりする)を渡されてとりあえず書面に書くよう案内されます。

この訴状は、裁判所用に1通、そして被告(訴える相手方)に送る用に1通(被告が複数なら、人数分)を用意しておき、両方裁判所に提出します。
裁判所用を「正本」といい、被告に送る用を「副本」と言います。


訴状を提出したら、裁判所で、内容に形式的な誤りが無いかといったの審査を受けまして、誤りがあれば補正を促され、なければ原告(訴えた側です)と第1回口頭弁論期日の日程調整です。

期日調整も終われば、裁判所は、訴状(の副本)を被告に送りつけることになります。

これを、訴状の「送達」といいます。


訴訟手続は、原告と被告という当事者同士の対決ですから、双方の言い分は相手方に届いていることが前提となります。
そこで、訴状も被告に送達されなければ、それ以上手続きを進めることができなくなります。


そうすると、被告が「面倒だから無視してしまえ!」と思って、あえて訴状を受け取らなかったらどうなるか。

訴状の送達は、「特別送達」という特殊な郵便で送られてきます。
これは書留郵便と同じく、訴状がポストに投函されることなく、必ず本人や同居の家族等が受取のサインをしなければならないものです。

となれば、不在者票とかが入っていても無視し続ければ、「訴状を受け取らない」ということが可能になります。


保管期間が過ぎれば、訴状は裁判所に戻ってきてしまいます。

特別送達ができない場合、前回紹介したように、執行官に持って行ってもらうという方法があります。
とはいえ、執行官送達も、執行官の訪問を無視し続ければ、送達不可ということになります。


これを認めると、負けそうな被告は、受取拒否し続ければ裁判を回避できるということになります。
それはあまりにも理不尽です。

そこで、「書留郵便に付する送達」という方法(通称「付郵便送達」)があります。
これは、被告がそこに住んでいることが間違いない場合に用いられるもので、普通の書留郵便で発送する方法です。

付郵便送達の(原告にとって)いいところは、仮に相手が受け取らなくても、発送時に送達があったものとみなされるという点です。

被告にとっては不利な制度なので、いきなり付郵便送達になることはありませんが、そこに住んでいるのに特別送達を受け取らない場合は、原告の申立てで付郵便になることがあります。


付郵便送達がされた場合、被告がいくら「俺は訴状なんか受け取ってないから裁判は無効だ」と主張しても、それは受け取ってないほうが悪いということになります。

付郵便送達という制度がある以上、裁判所からの手紙は、きちんと受け取っておくほうが身のためです。
きちんと受け取ったうえで、適切な対応を考えましょう。



適切な対応・・・とりあえず届いた書面を持って司法書士に相談したりとかですね! (宣伝)

では、今日はこの辺で。

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