2018年4月24日火曜日

債権法改正について(18)(詐害行為取消権3)

司法書士の岡川です。

今日もまた詐害行為取消権の話です。

今日取り上げる条文は、詐害行為取消権の行使の方法等を定めたものですが、これらすべて今回の債権法改正で新設されたものです。

詐害行為取消権の大量の条文の新設は、債権者取消権の理論的な対立を、全て立法的に解決したような感じですね。
制度趣旨や法的性質をどう理解するか、を考えるまでもなく、実務的には結論が全部条文に書かれてしまっています。


第424条の6 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

第424条の7 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。
一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者
二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者
2 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

詐害行為取消権というのは、誰に何を請求する権利なのか、という根本的なところは現行法には何も書かれていませんし、学説の対立もありました。
そういう本質論はさておき、

①債務者がした行為の取消し
②移転した財産の返還
③返還が困難なときは、価額償還

を請求することができると明記されました。
また、訴訟においては、債務者は被告にはならず、受益者や転得者のみが被告になるとされています。

これは判例の明文化で、「債務者・受益者・転得者の全員を被告として法律行為の取消しを請求すべき」とする説や、「受益者や転得者を被告として返還のみを請求すべき」とする説は、いずれも改正法の解釈としては困難になりますね。

また、債務者は被告にはなりませんが、訴訟告知をしなければいけないという制度が新設。
これは、後に出てくるとおり、詐害行為取り消しの効果が債務者に及ぶことになったことに伴う、債務者保護のための制度といえます。


それから、取消しの範囲については、次の条文が新設されています。

第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

判例の明文化で、特に異論もないところですね。


ところで、詐害行為取消権の行使によって返還を求める財産が動産や金銭の場合は、債権者が直接自分に引き渡すよう求めることができるというのが判例です。
この判例法理も条文に明記されることになりました。

第424条の9 債権者は、第424条の6第1項前段又は第2項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

まだまだ詐害行為取消権の改正は続きますが、ここでまた切ります。

では、今日はこの辺で。

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