司法書士は税金の専門家ではなく、通常の税務に関しては税理士さんの専権事項なのですが、裁判になるような法解釈の争いについては、「税務」というより「法律問題」といえますね。
さて、今日はまた、それなりに世間の関心を集めている珍しい判決が出ました。
競馬配当の所得を申告せず…元会社員に有罪判決(読売新聞)
競馬の馬券配当で得た約29億円の所得を申告しなかったとして所得税法違反(単純無申告)に問われた元会社員の男性(39)に対し、大阪地裁は23日、懲役2月・執行猶予2年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。この事件を知らない方のためにおさらいしておくと、この被告人は、独自のプログラムを開発して「儲かる確率が比較的大きい馬券を大量に購入してちょっとずつ儲ける」「ちょっと儲けた分を原資にさらに大量購入してちょっと儲ける」を繰り返したわけです。
所得から控除できる「必要経費」の範囲が争点となり、検察側が「当たり馬券の購入費しか認められない」と主張したのに対し、弁護側は「膨大な外れ馬券の購入費も必要経費と認め、純粋な利益だけに課税すべきだ」と反論したうえで、無罪を主張していた。検察側は、男性が申告しなかった税金額を約5億7000万円としていたが、判決は約計5200万円と認定しており、弁護側の主張の一部を採用したとみられる。
そして、最終的には、約28億7000万円分の馬券を購入して30億1000万円の配当を受け、収支としては1億4000万円の黒字だったようです。
基本的に、競馬で儲けた際の経費として認められるのは、「当たり馬券の購入代金のみ」のようです。
払戻金をもらうには、当たり馬券を買わなければいけないので、その分は必要経費になります。
その一方で、外れ馬券の購入代金は、払戻金をもらうのに必要な費用ではないので、所得から差し引くことができないというわけです。
これが今回のケースにも適用されると、経費として認められるのは、「30億1000万円の当たり馬券を買った代金」です。
その当たり馬券の代金は1億3000万円だったらしく、残りの27億4000万円は外れ馬券の購入代金です。
したがって、「1億3000万円使って30億1000万円儲けたから、所得は28億8000万円。このとき、所得税は5億7000万円」ということになります。
これを納税しなかったら、5億7000万円の巨額脱税。
これが検察側の主張ですね。
ただし、裁判所はこの主張を退けました。
今回の被告人の場合、もはや単なる娯楽の域を超えて、これは資産運用だと判断されたようです。
したがって、この事件に限っていえば、28億7000万円が経費だという判決になりました。
検察の主張が退けられたのに有罪になったのは、1億4000万円に対する所得税(これが5200万円)すら申告していなかったからです。
それはさすがに言い訳ができないですね。
なお、この判決は、本当にこの事件に限った話であって、例えば、1000万円くらいの馬券を当てたとして「今年は既に1000万円くらい競馬につぎ込んだから、所得は差し引き0だ」とか主張しても、まず認められませんので、確定申告しないと脱税で捕まります。
ご注意ください。
では、今日はこの辺で。
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