2014年4月7日月曜日

一物一権主義

司法書士の岡川です。


物を直接支配する権利を「物権」といいますが、物権に関して、「一物一権主義」という原則があります。
原則なので例外も多々ありますが、それはともかく、そういう原則があります。
この一物一権主義とは何か、というと、これがまた複数の意味で使われる用語でして、初学者を混乱させるものです。

まず、「同一物に対しては、同一内容のの物権はひとつしか成立しない」という意味で使われます。
これは、物権の排他性を表します。
例えば、あなたが土地を持っているとすれば、その土地の所有権はあなたに帰属します。
このとき、その土地には、あなたの所有権の他に別の所有権が同時に成立することはありません。
つまり、「あなたの所有物でありながら、かつ、他の人の所有物でもある」という状況にはならないということです。
そうなると権利関係が複雑になってしまうからです(「共有」については、いろんな説明の仕方がありますが、とりあえず、一物一権主義の例外だと考えておけばよいでしょう)。


次に、「ひとつの物権の客体は、ひとつの独立した物である」という意味でも使われます。
これは、物権の単一性や独立性を表します。
つまり、原則として「リンゴ5個に対する所有権」とか「車の後部座席の所有権」という物権は成立しないことになります。
リンゴ1個1個に所有権が生じますし、車の所有権は車の全体に及ぶのです。


ただし、この原則はかなり緩やかなものです。
例えば、「倉庫内のリンゴ一切」を一括して担保に入れたい場合、全体に「譲渡担保権」という担保物権を設定する方法が認められています(これを集合物譲渡担保とか流動動産譲渡担保といいいます)。
また、土地の一部を譲渡する(その一部だけ所有権を移転する)ということも可能です。
もっとも、土地の一部を譲渡しても、それを登記することはできないので、その部分の名義を自分のものにしようと思えば一筆の土地を、複数の土地に分ける(分筆する)必要があります。



一物一権主義は、民法の基礎的な知識なので、法律を勉強する人は知っておくべき概念です。
とはいえ、そんなに難しい概念じゃないので、「色んな意味がある」「厳格に貫かれる原則ではない」ということさえ頭に入れておけば、何となく理解できるでしょう。
そして、何となく理解しておけばそれで足ります。
では、今日はこの辺で。

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