2014年5月2日金曜日

ADRとは何か?

司法書士の岡川です。

前回、「裁判」について書きましたので、今日は「裁判以外」について書きます。

民事上の紛争が起こったとき、それを解決する手段としては、「当事者同士で交渉する」か「第三者に介入してもらう」の2通りあります。

「当事者同士で交渉する」(司法書士や弁護士を代理人として行う場合もありますが)方法は、任意交渉とか和解交渉とか示談交渉とかいいますね。
それで解決すれば時間も労力も節約できてよいのですが、交渉が決裂したり、そもそも相手が交渉の場に出てこなかったりすれば、第三者を通じた解決をしなければいけません。

第三者が介入する手続として代表的なのが「民事訴訟」です。
日本の(というか、近代法の)民事紛争解決手続として、中心に据えられているのが訴訟手続です。
これは、俗にいう「民事裁判」というやつですね。

民事訴訟は、途中で和解して終わることも多いですけど、手続の典型的な終わり方として想定されているのは、「判決」という裁判です。
「金払え」とか「請求を棄却する」とか、そういう裁判所の判断が裁判(判決)です。

そして、裁判で終わる訴訟手続以外で紛争を解決する手続を総称してADR(Alternative Dispute Resolution)といいます。
直訳すれば「代替的紛争解決」となりますが、意味としては「裁判の代替」なので「裁判外紛争解決手続」といもいいます。

平成19年に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR促進法)という法律が施行されて、ここでは「裁判外紛争解決手続」が正式な用語として採用されていることから、最近は「裁判外紛争解決手続」ということが一般的になっています。

さて、そのADRには様々なものがあります。
それらをADRの提供主体に基づいて分類すると3種類に分けられます。

司法型ADR

これは、司法機関である裁判所が提供するADR手続です。
裁判所も訴訟以外の手続として「調停」という手続きを用意しているのです。
民事調停と家事調停がありますが、どちらも裁判ではなく、合意形成を目的とした手続です。

行政型ADR

これは、行政機関が提供するADRです。
労働紛争に関して労働委員会が行うものや、消費者問題に関して消費生活センターが行うもの等、多種多様なものがあります。
東日本大震災の原発事故による被害賠償に関して、原子力損害賠償紛争解決センターが行うもの(原発ADR)もこれですね。
色んなものがありすぎて紹介しきれません。

民間型ADR

これは、民間団体が提供するADRです。
司法書士会とか弁護士会、あるいは公益法人や業界団体等が実施しています。
例えば、交通事故の損害賠償について、公益財団法人交通事故紛争処理センターが行うADRがよく使われています。
民間型ADRにも色んなものがありすぎて紹介しきれません。


一般的にADRというと、裁判所の外で行われる民間型ADRや行政型ADRを指します。
前述のADR促進法も、民間型ADR(同法では「民間紛争解決手続」といいます)の実施機関の認証などが規定された法律です。
認証を受けたADRには、色々と特典があります(例えば、申立てによって時効停止の効果が認められるなど)。


ADRの手法としては、大きく分けて「あっせん」「調停」「仲裁」の3通りがあります。
「あっせん」とは、ADR機関が間に入って、当事者の和解成立に向けて交通整理をするやり方です。
「調停」は、ADR機関が双方の言い分を聞いて和解案を提示するやり方です。
「仲裁」は、当事者双方がADR機関に最終判断を委ねる合意をして、ADR機関が仲裁判断を示すやり方です。


「あっせん」と「調停」は厳密に分けられるものではないですが、「仲裁」だけは少し違って、判決と同じく、第三者の判断に従うことになります(裁判の判決との違いは、予め「仲裁判断に従う」という合意があるという点です)。
しかも、この「仲裁」には、仲裁法という法律がありまして、適法な仲裁判断には、確定判決と同じ効力があるのです。
「裁判所が出した判決じゃないけど判決と同じように強制執行もできる」というものです。

まあ、ADRは円満解決を目指す手続という側面がありますから、仲裁ではなく、和解のあっせんや調停によって解決するのが一般的ですね。

というわけで、民事紛争の解決には、裁判以外にもADRという方法もあることをご紹介しました。


余談ですが、原発ADR機関に提出する申立書等の書類作成は、司法書士業務とされています。

原発ADR発足時から司法書士会と法務省と弁護士会で議論が重ねられていたらしいのですが、法務省が「裁判書類作成業務に含まれる」との見解を示したためです。

原発ADR機関は裁判所に準じる機関だという解釈で、その結果、裁判所(に準じる機関)に提出する書類の作成だから司法書士業務だ・・・ということのようです。
これにより、司法書士によるADR支援に法テラスが使えることになりました。
めでたしめでたし。


では、今日はこの辺で。


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