2014年12月9日火曜日

著作権の基礎知識

司法書士の岡川です。

昨日は著作者人格権の話をしましたが、そういえば、きちんと著作権の話をしたこともなかったですね。

著作権とは、著作物に関する独占的な権利であり、そのうち財産的権利をいいます。
「著作権」という権利があるのではなく、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、譲渡権、翻案権・・・といった、色んな権利(これら個別の権利を「支分権」といいます)の総称が著作権です。

「著作物」というのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」という定義がされています(著作権法2条1項1号)。

人の「思想又は感情」が含まれていないといけないので、自然物(芸術的な形の岩とか)や事実そのものは著作権の保護の対象にはなりません。

また、「表現したもの」でないといけないので、思想やアイデアそのものは著作権の保護の対象とはなりません。
例えば、新しい絵画の表現技法を作り出しても、その技法そのものは著作物ではなく、その表現技法を基に具体的に描かれた絵画が著作物として保護の対象となります。
これが著作権に関する基本的な考え方であり、「表現・アイデア二分論」といいます。

「創作的に」というのも、著作権の要件です。
ここでいう創作性は、高度な芸術的・学術的価値があったり進歩的なものであったりする必要はなく、著作者の何らかの「個性」が表れていればよいと解されています。
したがって、「既存の表現をそっくり模倣したもの」とか「誰が表現しても同じような表現にしかならないようなもの」(不可避的な表現、ごくありふれた表現)を保護の対象から排除する趣旨です。


「表現したもの」が著作物だといっても、物体そのものを対象とする権利ではありません。
物体そのものは、所有権などの物権の対象となります。

例えば、紙に1枚の絵を描いたとして、その何かが描かれている紙が著作物なのではなく、そこに描かれた表現が著作物です。
すると、その(物体としての)絵を誰かに売った場合、買主に所有権は移転しますが、著作権は必ずしも買主に移転しません。
逆に、その何かが描かれている紙の所有権は手元においたまま、そこに描かれた表現に関する独占的な利用権(=著作権)を譲渡することも可能です。
私たちが本屋で本を買う場合も、物質的な意味での「本」を買う(所有権を取得する)のであって、その中の記述に関する権利(著作権)自体は著作者のもとにあるのです。


定義に当てはまる「著作物」を著作者が作り出せば、著作権はそれと同時に何らの手続きをとらなくても発生し、かつ、著作者に自動的に帰属します。
特許庁に出願して登録しなければ権利が発生しない特許権などとは異なります。

著作権は、他人による著作物の(無許諾での)利用を原則として禁止する権利です。
著作権者は、著作物を複製したり、翻訳したり、頒布したり、ネットに流したりすることができますが、逆にいえば、著作権者以外の者が勝手にそれらを行うと、著作権侵害となります。

前述のとおり、例えば本を購入してその本の所有権を取得したとしても、その本に記述された文章の著作権までは取得できません。
したがって、その本を全部コピーして誰かに売ったりすれば、それは著者の著作権を侵害する行為となります。


ちなみに、著作権は、財産権ですから、誰かに譲渡することも可能です。
そのため、「著作者」と「著作権者」が異なることもあります。
ただし、著作者には著作者人格権がありますので、注意が必要です。

著作権は、特許権なんかと違い、簡単に成立するものです。
知らず知らずのうちに誰かの著作権を侵害しているかもしれません。
他人の文章やイラストを使うときは、十分注意しましょう。


では、今日はこの辺で。

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