司法書士の岡川です。
前回、賃貸物件を借りている人(賃借人)が負っている義務について書きました。
続いて今回は、貸している側である家主の義務をご紹介。
家主は、賃貸借契約の「賃貸人」といいます。
「家主は、家賃をもらうだけじゃないの?」というとそうでもありません。
家賃をもらう以上は、家主も家主できちんと義務を果たす必要があります。
賃貸人の中心的義務としては、賃借人に対象物件を使用収益させる義務があります。
当然といえば当然ですが、賃貸借契約は、貸す側と借りる側の「意思の合致」さえあれば成立するので、実際に賃借人が住むためには、賃貸人に「使用させる義務」が無いといけないわけです。
さらにこれを細かくみていくと、まず賃借物を賃借人に引き渡す義務が考えられますね。
引き渡さないと使用できませんので、賃貸借契約を締結した後、賃貸人がいつまでたっても引き渡してくれない(具体的には、ずっと住み続けてるとか、鍵を渡さないとか)場合は、賃借人は、契約の効力として賃貸人に「引き渡せ」と請求することができるわけです。
賃借人に引き渡して終わりではなく、その後も引き続き賃借人が使用できる状態に保つというのも、「使用収益させる義務」の内容といえます。
さらにもうひとつ重要な義務として、賃貸人には、対象物件の修繕義務があります。
使用収益させる義務がある以上、それに適した状態に修繕する義務も負うということです。
雨漏りがする、壁に穴があいている、床が抜けている…等、建物の修繕が必要な状態になっていれば、賃貸人の責任においてこれを修繕しなければなりません。
また、賃借人が修繕した場合も、その費用を賃借人に支払わなければなりません。
もっとも、実際の賃貸借契約では、軽微な修繕については、賃借人負担という特約があることが一般的です。
細々とした修理で、毎回家主を呼びつけてたらキリが無いですからね。
大規模修繕まで借主負担とするような契約もできないこともないので、家を借りるときはよくよく契約内容を確認しましょう。
仮にそんな契約条項になってたら、消費者契約法的にまずいと思いますけど…(貸主が事業者なら無効になる可能性もありますね)。
といった具合で、家主さんも「貸したらそれで終わり」というわけではないので、家を貸すときは「賃貸人の義務」を忘れないようにしましょう。
では、今日はこの辺で。
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