2016年6月24日金曜日

不在者財産管理人

司法書士の岡川です。

自己の財産管理を第三者に任せる制度は、相続財産管理人だけではありません。

不在者の財産を管理する、不在者財産管理人という制度もあります。
民法25条という結構前の方に出てきます。
前の方だから何だというと、別にそれ自体に何の意味もないのですが。

不在者というのは、「従来の住所又は居所を去った者」ですが、ちょっと週末に湯河原の別荘に行ってるような場合なんかは、ここでいう不在者には含まれません。
住所や居所を去って、容易に戻る見込みのないような場合をいいます。


不在者財産管理人にも、民法の規定に基づいて家庭裁判所が選任する法定の管理人と、不在者が選任した任意の管理人があります。

不在者というのは、基本的には生きている(少なくとも法律上は死亡したことになっていない)ことが前提ですので、相続財産管理人の制度と違って、民法の条文上は「不在者がその財産の管理人を置かなかったときは」という限定がついています。
つまり、任意の財産管理人が置かれることが原則だということですね。

自分の財産を残して長期間自宅を離れるような場合、普通は誰かに委任契約によって管理を任せるでしょうから、管理してくれる人がいるならそれはそれで問題ない。
問題は、誰にも管理を任せずにどこかに放浪してしまった場合です。
また、任意の管理人はいるけれど、管理権限の範囲外の行為をする必要に迫られた場合も問題になります。

実際には、「財産を誰にも管理させずに放置して放浪してしまった」というより、どちらかというと「放浪している人に、事後的に財産が帰属した」ような場合に問題が顕在化することが多いですね。

例えば、行方不明者の親が死んで、その行方不明者が遺産の相続人になったような場合とか。
共同相続人などの利害関係人は、その行方不明者がいないと遺産分割協議をすることができません。

そういう場合に、財産管理人を選任する規定が民法にあります。

手続的には、相続財産管理人と同じく、家庭裁判所に選任の申立てをします。


行方不明者については、もうひとつ「失踪宣告」という制度があります。
これは、長期間生死不明の場合など、法律上は死んだことにしてしまう制度です。

ただし、行方不明で長期間帰ってこないなら、「さっさと失踪宣告申立てて死んだことにしちゃえばいいじゃん!」と安易に失踪宣告を申し立てるのは気を付けた方が良いです。

「人を勝手に死んだことにするのは、道義的にいかがなものか?」とかそういう話ではありません。

そうではなく、ある人を死んだことにしてしまうと、当然ながら相続が発生します。
それによって、相続人が関与して問題が解決をすることもあれば、逆に、相続が発生することで問題が余計にややこしくなることもあるからです。

死んだことにしてしまうと余計に問題が複雑になる場合は、失踪宣告ではなく、不在者財産管理人の選任申立てを検討した方が良いかもしれません。

では、今日はこの辺で。

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