司法書士の岡川です。
先週の土曜日に、大阪府と高槻市(及び関連団体)が共催する「高槻市 安心・安全 空家の管理・活用講座」という、市民向けセミナーが開催されました。
私も大阪司法書士会の空き家問題対策検討委員会の委員(高槻市担当)として、「次代に先送りしない権利関係のポイント」についてお話をさせていただきました。
同じものを今年の1月にも行ったのですが、その第二弾です(といっても、高槻市の他に、大阪府下の市でも別途開催されていますが)。
空き家問題については、大阪司法書士会も取り組んでおります(参照→「空き家問題」)。
本格的な取組みが始まる前から私もこの問題には関わっています。
今回、私が講師をしたパートのテーマは、空き家問題を解決する大前提である「権利関係の確定」の重要性についてです。
せっかくなので要点をここでも少しご紹介します。
空き家問題には、色々と細かい問題があり、課題は多岐にわたるのですが、権利関係に関して大きなポイントとしては2点です。
それは、「相続手続を放置しないこと」「共有関係を放置しないこと」です。
特に前者の問題が後者にもつながってきますので、最重要ポイントとしては相続でしょうか。
過去にも書きましたが、空き家を含む不動産(建物と土地)の権利関係を公示するのは、不動産登記という制度です。
いわゆる不動産の「名義」というのは、不動産登記制度を指し、名義を含む不動産の権利関係は法務局に備え付けられた登記簿に記載されています。
で、この不動産登記、特に権利関係についての登記は、「権利」であって「義務」ではありません。
つまり、あなたがこの不動産について何らかの権利を有していることを社会的に認めさせることができる権利を有しているのであって、権利者は権利者として登記しなければならないというようなものではありません。
ということは、不動産について特に実生活上の問題が顕在化していない(名義が誰なのかにかかわらず現実に居住できている場合など)場合、その権利を特に行使しない(登記しないで放置する)ということが少なくありません。
そのため、登記簿を調べてみると、不動産の名義人として登記されているのが明治時代の人だとかそれより前の人だとか、そういうことが結構あります。
そういった不動産についていざ活用しようと思ったとき(売るとか誰かに貸すとか)、そのままでは何もできません。
必ず、現在生きている相続人(「相続人の相続人」とか、「相続人の相続人の相続人」とかも全部含む)の全員の合意を取り付けて、一度相続登記を経なければならないのです。
関係者は5人とか6人とかいうレベルではありません。
20人30人に及ぶことも珍しくありません。
もう、ほぼ他人同士の集まりです。
「ほぼ」どころか、完全に他人だったりもします(法律上の親族関係にない人同士ということもあります)。
この全員に連絡がつき、協力を得られることが絶対条件になるわけです。
絶望的ですね。
相続人の人数が多いことだけが問題ではありません。
名義人が最近の人で、相続人の数がそれほど多くなかったとしても、そのうちの一人でも行方不明になっていたりすれば、それだけで手間と費用と時間がかかります。
この問題は「時間が解決する」ものではなく、むしろ「時間の経過とともに悪化する」ものです。
当事者の一人が死亡すると、その相続人が新たな当事者に加わるわけですから、それだけ権利関係がより複雑化するのです。
もちろん、解決する方法は色々あるのですが、時間がたてばたつほど手間と費用と時間はどんどん増えていきます。
つまり、なるべく早く問題解決のために動かなければ、それだけ損するということです。
相続にかかわる問題は、予防が何よりも大事で、いざ問題が顕在化すればなるべく早い段階で手続に着手することが重要になります。
それから、共有関係というのも問題です。
共有というのは、相続によって生じることが多いですが、不動産を買ったときに夫婦の共有にしておく場合などもよくあります。
共有というのは、非常に不安定な状態でして、共有物の管理には共有者の過半数や全員の同意が必要になることがあります。
また、共有者の一部が死亡したり行方不明だったりすれば最悪です(上記と同じ問題が、さらに複雑化して出てくるのです)。
当たり前ですが、共有物は簡単に処分ができないのです。
共有物については、「権利を失う可能性」など別の問題もありますので、特に共有にすべき事情がなければ、なるべく早めに解消することが望ましいと考えていただいた方が良いかもしれません。
まあ、そんなわけで、空き家問題の裏には、結構な確率で相続問題があります。
そして、財産管理の問題、成年後見の問題なども絡んできます。
空き家の問題についてはお近くの司法書士(高槻の方であれば、例えは、お近くの岡川総合法務事務所とかですかね~)へご相談ください。
では、今日はこの辺で。
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