連帯債務と不可分債務の区分が整理され、連帯債務の絶対効が減らされた、という話が終わりました。
では不可分債務はどうか?
不可分債務については、改正法では、ほぼ全て連帯債務の規定が準用されます(改正430条)。
唯一準用されずに異なるのが、混同の絶対効の規定(現行438条、改正440条)で、不可分債務では相対効となります。
逆に、連帯債務で絶対効が認められる更改と相殺については、不可分債務でも絶対効があるということになります。
現行民法では、絶対効の規定(現行434~439条)は全て、不可分債務に準用されませんので、更改と相殺については改正によって絶対効を付与されることになるわけです。
つまり、連帯債務については絶対効が減り、不可分債務については絶対効が一部付与された。
このことで、両者の効力は接近することになります。
これにより「当事者の意思による不可分債務」という類型を残しておく実益も乏しくなるわけです。
現行法と比べるとややこしいですが、改正法だけ見ると、類型も整理されたし絶対効も限定的になるし、まあわかりやすくなったんじゃないですかね。
ところで、不可分債務だろうが連帯債務だろうが、債務者が複数いる場合は、誰かが債務を弁済した後の内部的な精算(これを求償といいます)のルールが必要になります。
求償関係の条文は、直接的には連帯債務に関して規定しており、不可分債務については、それを準用するという形になっています。
色々と条文が細かくなったのですが、基本的には判例を明文化しただけなので、現行法とルールが大幅に変わることはありません。
唯一変わってそうなのが445条ですね。
現行445条は、「連帯債務者の1人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるとき」という特殊な場面におけるルールを規定しているのですが、この場合、無資力のリスクは債権者が負担するということになっています。
これは、債権者の意思に反するという批判があったので、このルールは廃止。
削除された現行445条の代わりに、全く別の445条が新設されますが、これは前回の話と関連してきます。
第445条 連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。
連帯債務者の1人について生じた事由について、時効や債務の免除の絶対効がなくなり、相対効、すなわち、他の債務者には影響しないということになりました。
相対効ということは、連帯債務者1人について時効が完成したり債務の免除を受けたとしても、他の連帯債務者にとっては「知ったこっちゃない」事情なので、求償関係についても同様で、他の連帯債務者はその連帯債務者に対して求償できる、というのが新445条の趣旨です。
つまり、時効や免除で、債権者からの請求は拒絶できるようになったとしても、他の連帯債務者からの(自己の負担部分に応じた)求償は拒否できないということです。
というわけで債務者複数の場合はこれくらいにして、次回は債権者が複数の場合です。
では、今日はこの辺で。
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