2018年7月8日日曜日

【告知】大阪北部地震無料電話相談(大阪司法書士会)

大阪司法書士会では、大阪北部地震の被災者のための電話相談を行っています。
(開催日時)
7月2日(月)から7月31日(火)まで、土・日・祝日を除く毎日、午後1時~午後4時
(相談内容)
法律相談を中心とするが、生活に関するもの、各種支援制度に関するものなど、その他の相談についても可能な限り柔軟に対応する
(電話番号)
06-6949-5605

2018年7月4日水曜日

債権法改正について(21)(不可分債務と連帯債務2)

司法書士の岡川です。

連帯債務と不可分債務の区分が整理され、連帯債務の絶対効が減らされた、という話が終わりました。
では不可分債務はどうか?


不可分債務については、改正法では、ほぼ全て連帯債務の規定が準用されます(改正430条)。
唯一準用されずに異なるのが、混同の絶対効の規定(現行438条、改正440条)で、不可分債務では相対効となります。

逆に、連帯債務で絶対効が認められる更改と相殺については、不可分債務でも絶対効があるということになります。

現行民法では、絶対効の規定(現行434~439条)は全て、不可分債務に準用されませんので、更改と相殺については改正によって絶対効を付与されることになるわけです。

つまり、連帯債務については絶対効が減り、不可分債務については絶対効が一部付与された。
このことで、両者の効力は接近することになります。

これにより「当事者の意思による不可分債務」という類型を残しておく実益も乏しくなるわけです。


現行法と比べるとややこしいですが、改正法だけ見ると、類型も整理されたし絶対効も限定的になるし、まあわかりやすくなったんじゃないですかね。


ところで、不可分債務だろうが連帯債務だろうが、債務者が複数いる場合は、誰かが債務を弁済した後の内部的な精算(これを求償といいます)のルールが必要になります。

求償関係の条文は、直接的には連帯債務に関して規定しており、不可分債務については、それを準用するという形になっています。

色々と条文が細かくなったのですが、基本的には判例を明文化しただけなので、現行法とルールが大幅に変わることはありません。

唯一変わってそうなのが445条ですね。

現行445条は、「連帯債務者の1人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるとき」という特殊な場面におけるルールを規定しているのですが、この場合、無資力のリスクは債権者が負担するということになっています。
これは、債権者の意思に反するという批判があったので、このルールは廃止。

削除された現行445条の代わりに、全く別の445条が新設されますが、これは前回の話と関連してきます。

第445条 連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。

連帯債務者の1人について生じた事由について、時効や債務の免除の絶対効がなくなり、相対効、すなわち、他の債務者には影響しないということになりました。
相対効ということは、連帯債務者1人について時効が完成したり債務の免除を受けたとしても、他の連帯債務者にとっては「知ったこっちゃない」事情なので、求償関係についても同様で、他の連帯債務者はその連帯債務者に対して求償できる、というのが新445条の趣旨です。

つまり、時効や免除で、債権者からの請求は拒絶できるようになったとしても、他の連帯債務者からの(自己の負担部分に応じた)求償は拒否できないということです。


というわけで債務者複数の場合はこれくらいにして、次回は債権者が複数の場合です。

では、今日はこの辺で。

2018年6月12日火曜日

債権法改正について(20)(不可分債務と連帯債務1)

司法書士の岡川です。

やっと詐害行為取消権の話が終わったところですが、次は多数当事者間の債権債務関係に関する、これまたややこしい話です。
今日から何回かに分けて取り上げるのは、不可分債権・不可分債務・連帯債権・連帯債務、この辺です。


・・・ん?連帯債権?

まあ、それはひとまず置いといて。


この分野は、現行法の理解だけでも難しいのに、改正法がどう変わったか理解するのはもっとややこしいですので気合入れましょう。
まず、条文の順番は無視して、債務者が複数の場合からいきます。

債務者が複数の場合、考えられるパターンは、
・分割債務
・不可分債務
・連帯債務

この3つです。
現行法におけるこれらの区分は、ざっと次のような感じ。

分割債務とは、性質的に分割可能で、当事者も特に「分割しちゃだめ」と決めてない債務。
例えば、「AとBが合計100万円を支払う」という債務は、金額を分ければいいだけなので、分割可能ですね。
この場合、原則としてAが50万円、Bが50万円支払えばよい。

これに対して、不可分債務は、「性質的に」あるいは「当事者の意思表示によって」分割できない債務。
「AとBが甲車を引き渡す」という債務は、甲車を半分ずつ用意して別々に引き渡すわけにもいかないので、性質的に分割不可能ですね。
あるいは、「100万円を支払う」といった性質的には可分な債務でも、「50万ずつに分けるのではなく、100万円を耳そろえて一括で支払う」という取り決めがあれば、不可分債務ということになります。

連帯債務とは、数人の債務者が連帯して(それぞれが債務の全体に対して)責任を負う(という取り決めがある)債務。
性質的には分割可能なんだけど、連帯債務として取り決めれば連帯債務です。


性質的に不可分な債務は不可分債務で間違いないので、問題は性質的には可分な場合です。
現行法の解釈では、原則として分割債務、不可分だと決めれば不可分債務、連帯して責任を負うと決めれば連帯債務、というふうに振り分けられているわけです。


これが改正法では、定義から変わってきます。

・不可分債務…債務の目的がその性質上不可分である場合(改正430条)
・連帯債務…債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するとき(改正436条)

つまり、「性質上可分だけど、当事者の意思によって不可分」というパターンはなくなり、不可分債務とは、性質上不可分の場合のみを意味することになります。
当事者の意思によって各債務者に債務全体の責任を負わせる場合は、連帯債務に一本化されました。

不可分債務と連帯債務の振り分けがスッキリ整理されたところで、連帯債務の規律が変更されます。

まず、債務者の1人について生じた事由が、他の連帯債務者にどう影響するかという問題。
現行法では、連帯債務については、以下の事由について絶対効がある(1人の債務者について生じた事由が、他の債務者についても及ぶ)と規定されています。

・履行の請求(現行434条)
・更改(現行435条)
・相殺(現行436条)
・免除(現行437条)
・混同(現行438条)
・時効の完成(現行439条)

このうち、請求、免除、時効の絶対効の規定が削除されました(これらは相対効になる)。
つまり、残った絶対効は、更改、相殺、混同のみです。


なお、細かい話ですが、現行法によると、連帯債務者は、他の債務者が債権者に対して有している債権を使って相殺することが可能です。
例えば、連帯債務者ABがCに対して100万円の連帯債務(甲)を負っていて、AがCに対して50万円の債権(乙)を有している場合、Bは、勝手にこの乙債権をもって甲債権と相殺し、甲債務におけるAの負担部分(50万円)を消滅させることが可能なわけです。
もちろん、Bの負担部分の50万円は残りますが、50万円は消滅したので100万円を支払う義務はなくなるわけです。

でもまあ、さすがに他人(連帯債務者)の債権を勝手に使って相殺するのは無茶やろ~という批判が強かったので、次のように改正されます。

第439条2項 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

つまり、勝手に相殺できるのではなく、履行を拒絶できるという形になります。
先ほどの例でいうと、Aが50万円分で相殺可能なので、Bとしては、Cから100万円全額の請求をされても、A負担部分の50万円については履行を拒絶できるということです。

長くなってきたので、不可分債務については次回へ回します。

では、今日はこの辺で。

2018年5月16日水曜日

債権法改正について(19)(詐害行為取消権4)

司法書士の岡川です。

債権法改正、今日のテーマは詐害行為取消権。
詐害行為取消権の話も皆さんそろそろ飽きてきた頃じゃないですか?
私は飽きました。

でも、もう終わりです。あと一息!


詐害行為取消権が行使された場合の効果についても条文上細かく規定されるようになりました。

第425条 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

現行法では、「前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。」と定められており、取消の効力は、その相手方である受益者や転得者に対してのみ(相対的に)生じて債務者には効力が及ばないというルールになっています。
そうすると、例えば「債務者に効力が及ばないのに、取消後の目的物を債務者に返還させる」ことをどう説明するのか?(「債務者にとっては有効」な契約によって引き渡した目的物なので、返すといわれても受け取る理由がない)という問題等もありました。

改正法では、効力の及ぶ範囲として「債務者及び」という文言が追加されました。

ただし、あくまでも、債務者に対して効力が及ぶというだけで、全ての受益者・転得者に対して効力が及ぶというわけではありません。
424条の5でも出てきましたが(参照→「債権法改正について(16)(詐害行為取消権1)」)、改正法では現行法より色んな意味で相対性が限定されているものの、完全に取消しの絶対効までを定めたものではないといえます。


債務者に対して取消の効力が及ぶことになったので、取消後の処理についても新たな規律が必要になります。

第425条の2 債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

第425条の3 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

第425条の4 債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
一 第425条の2に規定する行為が取り消された場合 その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
二 前条に規定する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。) その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

細かくかかれていますが、要するに、契約が取り消された場合は、相互に元に戻しましょうという当然の話です。
現行法では、債務者には効力が及ばないという前提があったので、例えば受益者が債務者に不動産を返したとしても、受益者は債務者に対して「代わりに売買代金を返せ」と請求する権利はありませんでした(不当利得の返還請求という形での解決を図るしかない)。
前提が変わったので、この反対給付の請求権をストレートに認めることになったわけですね。


というわけで、詐害行為取消権の改正はこれで終わりです。
大きく変わっているので、試験勉強している人とかは、整理し直しておきましょう。

では、今日はこの辺で。

2018年4月24日火曜日

債権法改正について(18)(詐害行為取消権3)

司法書士の岡川です。

今日もまた詐害行為取消権の話です。

今日取り上げる条文は、詐害行為取消権の行使の方法等を定めたものですが、これらすべて今回の債権法改正で新設されたものです。

詐害行為取消権の大量の条文の新設は、債権者取消権の理論的な対立を、全て立法的に解決したような感じですね。
制度趣旨や法的性質をどう理解するか、を考えるまでもなく、実務的には結論が全部条文に書かれてしまっています。


第424条の6 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

第424条の7 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。
一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者
二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者
2 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

詐害行為取消権というのは、誰に何を請求する権利なのか、という根本的なところは現行法には何も書かれていませんし、学説の対立もありました。
そういう本質論はさておき、

①債務者がした行為の取消し
②移転した財産の返還
③返還が困難なときは、価額償還

を請求することができると明記されました。
また、訴訟においては、債務者は被告にはならず、受益者や転得者のみが被告になるとされています。

これは判例の明文化で、「債務者・受益者・転得者の全員を被告として法律行為の取消しを請求すべき」とする説や、「受益者や転得者を被告として返還のみを請求すべき」とする説は、いずれも改正法の解釈としては困難になりますね。

また、債務者は被告にはなりませんが、訴訟告知をしなければいけないという制度が新設。
これは、後に出てくるとおり、詐害行為取り消しの効果が債務者に及ぶことになったことに伴う、債務者保護のための制度といえます。


それから、取消しの範囲については、次の条文が新設されています。

第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

判例の明文化で、特に異論もないところですね。


ところで、詐害行為取消権の行使によって返還を求める財産が動産や金銭の場合は、債権者が直接自分に引き渡すよう求めることができるというのが判例です。
この判例法理も条文に明記されることになりました。

第424条の9 債権者は、第424条の6第1項前段又は第2項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

まだまだ詐害行為取消権の改正は続きますが、ここでまた切ります。

では、今日はこの辺で。