最近、いろいろと成年後見制度のことがニュースなどで話題に上っています。
例えば、被後見人に選挙権が付与されることになったとか、後見人の弁護士(しかもかなり偉い人)が金銭を着服して逮捕されたとか。
このブログでも、成年後見センター・リーガルサポートの話題を何度か書きました。
この高齢化社会(正確には、日本の現状は「高齢化」ではなく「超高齢社会」といいます)では、成年後見制度の需要が飛躍的に高まっています。
加えて、今までは、多少判断能力が衰えていても、事実上、家族が本人に代わっていろいろ(勝手に)手続きをすれば済んでいたのですが、最近は金融機関等でも、本人確認(意思確認)が厳しく要求されるようになったようで、判断能力に疑問が生じるようになると、家族が勝手に手続きを代行することは難しくなってきました。
このように、今や成年後見制度は誰にでも関係のある制度になっています。
そこで、今日から何回かに分けて、成年後見制度についてご紹介しようと思います。
1.成年後見制度の概要
成年後見制度とは、病気や高齢のために判断能力が不十分な(衰えた)方の生活を支援する制度です。具体的には、認知症の方や精神障害・知的障害をもつ方に「後見人」「保佐人」「補助人」といった支援者(以下、「後見人等」といいます)がつき、後見人等が様々な支援を行います。
この後見人等は、何をする人なのかというと、「財産管理」と「身上監護」がその職務です。
まず、財産管理ですが、後見人等には「代理権」や「同意権(取消権)」が与えられます。
「代理権」があれば、本人に代わって財産を管理したり本人に関する契約等の各種手続きを行うことができます。
自分自身ではできないことでも、代理権を有する後見人等がいれば、できることの幅が広がります。
また、「同意権(取消権)」があれば、本人が自分1人で重要な契約をすることができなくなります。
そして、同意を得ずに本人が契約した場合、それがもし本人に不利益となる契約であったら、後から問答無用で契約を取り消すことができます。
だまされて財産を奪われたような場合、「だまされた」ことを証明する必要もありません(詳しくは「行為能力の話」参照)。
そして、身上監護とは、本人の生活環境を整えたり適切な療養が受けられるように監督し、保護することです。
成年後見制度は、あくまでも本人に代わって契約を行ったり、契約に同意を与えることで、法的側面から本人をサポートする制度です。
したがって、後見人等が行う身上監護も、法的な事務であり、直接身の回りの世話をしたり介護をしたりといったものではありません。
例えば、介護が必要な人には、直接介護を行うのではなく、「適切な介護サービスを探し、契約をする」のが仕事になります。
同じ「かんご」でも、後見人等が行うのは「看護」ではなく「監護」なのです。
もちろん、親族等が後見人等になっている場合、事実上、介護なども同一人がやることになりますが、それはあくまでも親族としてしているのであって、後見人等の職務として行うわけではありません。
2.後見制度の種類
成年後見制度には、大きく分けて2種類存在し、「法定後見」と「任意後見」があります。法定後見は、既に判断能力が不十分な方について、家庭裁判所に申し立てることで、後見人等を選任してもらう制度です。
その法定後見には、さらに「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれます。
他方、任意後見は、判断能力が十分ある方が、将来に備えて後見人になる方と契約(任意後見契約)を締結し、将来的に判断能力が衰えた段階で、その人が後見人に就任するという制度です。
任意後見契約は、必ず決めておくべき事項が法律で定められていますが、あくまでも「契約」ですので、法律の条件を満たせば比較的自由に内容を決めることができます。
それぞれの類型によって、後見人等の代理権の有無や範囲、取消権の有無や範囲が異なっていますので、本人の状態に合わせて類型を選択し、その人にあった支援をすることが可能になっています。
このように、ひとくちに「成年後見制度」といっても、いろんな制度があります。
次回は、法定後見の類型についてご紹介しようと思います。
では、今日はこの辺で。
成年後見シリーズ
第1回「成年後見制度入門」 ← いまここ
第2回「法定後見の類型」
第3回「任意後見契約について」
第4回「後見終了後の問題」
第5回「後見人には誰がなるか?」
第6回「成年後見制度を利用するには?」
番外編「成年後見の申立てにかかる費用」
番外編2「成年後見の申立てにかかる時間」
(このほかにも、成年後見についての記事はありますので、右上の検索窓で検索してみてください)
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