2013年6月19日水曜日

日本国憲法の基本原理

司法書士の岡川です。

突如始まった「原理・原則をおさらいする」第1弾は、日本国憲法の話です。
やはりこういうのは、大原則からいったほうがいいですからね。

日本国憲法の基本原理は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つといわれています。
「三大原理」とか「三大原則」ともいわれますが、これらは憲法の条文上に「日本国憲法の原理」として明記されているわけではなく、学説によって確立されていったものです。
なので、今ではおそらく中学校の社会の教科書に載っているはずですが、かつては、はっきりとこの3つを挙げて「基本原理」と習わなかった時代もあるようです。


さて、この基本原理は、いずれも文字通りの意味ですから、特に個々の解説はいらないですね。
中学の教科書的な解説ではなく、特に今回で述べておきたいのは、日本国憲法の基本原理というのは、「個人主義」に立脚したものだということです。

国民主権は、政治的価値の根拠を個々の国民(個人)に求める考え方から導かれるものです。
基本的人権の尊重は、まさに個々の人間を個人として尊重すべきという考えから出てくるものです。
また、個人の尊厳を保つには、平和でなければなりません。

つまり、日本国憲法では、「個人の尊厳」に最大の価値が認められているのです。
それを端的に表した条文が憲法13条であり、ここには何の留保もなく「すべて国民は、個人として尊重される」とはっきりと記されています。


「個人の尊厳」とは、「他人から見て立派に生きる」ということを意味しません。
その人がその人として尊重されるという意味です。

誰もが「個人」として尊重される以上、基本的に他人が人の生き方に口出しすることはできません。
どんな趣味嗜好を持っていようが、どう生きようが、その人の勝手(それはそれとして尊重される)といえます。
その人が本当に望んだ人生であれば、たとえ一生自分の部屋から出なくても構わないわけです。
それを他人がとやかくいう権利はありません。

もちろん、人間が社会の中で生きている以上、他者(あるいは社会)との関係で、その人の生き方が制約を受けることもあります。
実際に、個人のあらゆる行動に法律で様々な制約がかけられていますが、それは、その人の行動を許容する以上に重視すべき理由があるからです。
「人を殺す行為」は、「被害者の尊厳」を損ねる行為ですから、その範囲において、その行動は許容されないわけです。
逆にいえば、例えば「人を殺そうと考えること」なんかを制約する理由はありません。


というわけで、例えば「人の趣味嗜好を制限するような法律」が作られようとしたら、憲法の基本原理に真っ向から反している可能性がありますよ、ということです。

では、今日はこの辺で。
次回は未定。

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