また、後見人による不祥事です。
被成年後見人の保険金 弁護士口座で管理 家裁に未報告、解任(河北新報)
成年後見制度の成年後見人を務めた仙台弁護士会の男性弁護士が被後見人の保険金を自分の業務用の口座で管理し、管理状況を仙台家裁に報告しなかったことが24日、関係者への取材で分かった。後見人は通常、被後見人の財産を専用口座で管理し、家裁の監督を受ける。弁護士は財産を不適切に管理したとして後見人を解任され、事実上廃業した。
今回のケースは、今のところ横領などの違法行為は確認されていないようで、その点は良かったのですが、2億6000万円もの財産を家庭裁判所に報告しないという行為は、極めて不適切です。
家庭裁判所は、被後見人の財産の流れを全て把握するために、自らが網羅的に調査することは物理的に無理ですから、被後見人の財産状況は、基本的に後見人からの報告に頼ることになります(不正の疑いがあるような場合は別です)。
つまり、報告しなければ、家庭裁判所の監督が及ばない財産を手元に置いておくことが可能になります。
後見人は、被後見人の財産状況を報告するため、定期的に財産目録を作成して提出します。
そこの財産目録に2億6000万円が載っていないということになれば、仮にそれが無くなっても、家庭裁判所が気づくことができませんし、どのような用途に使用したのかも把握できません。
しかも今回のケースは、被後見人の専用口座ではなく、自分の業務用の口座で管理しており、弁護士自身の財産と混同してしまっています。
「保険金が専用口座に入ると引き出せなくなると考えた」と述べているようですが、仮に何らかの正当な事情があって、一時的に自分の口座に入れておいたとしても、家庭裁判所に報告しない理由にはなりません。
もっといえば、保険金用に別口座を作ることだってできたはずです。
意図的に被後見人の財産を「隠した」といわれても仕方ないでしょう。
専門職だろうが親族だろうが、後見人として財産管理をする場合、自分の財産と被後見人の財産を分けることは、基本中の基本です。
他人の財産を預かっているわけですから、自分の個人口座で一緒に管理したりすることは、やってはいけません。
特に、近親者の場合、正式に後見人になる前は、自分の財産から被後見人のための支出をしたり、逆に被後見人の財産から自分のための支出をしたり、財産の区別はルーズになっていることが少なくありません。
家族の財布は共通というのは珍しいことではありませんので、後見が開始する前はそれでもいいのです。
しかし、その延長で、後見人に選任された後も同じようにルーズにやっていると、結果的に被後見人の財産を流用することにつながります。
後見人となった以上は、きちんと「ここからここまでが被後見人の財産」ときっちり確定させ、財産目録を作成し、家庭裁判所に報告します。
そして、それ以後は、一円単位で帳簿をつけて管理をすることが必要です。
これは、結構大変なので、専門職後見人が選任される割合が増えているのだと思われます。
その基本中の基本を、専門職が守らないというのは、杜撰の極みなのです。
そんな杜撰なことをやるなら、報酬払って専門職が後見人になる意味がありません。
犯罪行為は見つかっていないようですが、そんな杜撰な後見人は危なっかしくて仕方ないので、解任されて当然ですね。
余談ですが、後見人の不祥事が起こると、司法書士の後見業務の監督体制が取り上げられるのは、うれしいことです。
司法書士が不正を行った側として報道されることがないよう願うばかりです。
では、今日はこの辺で。
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