2013年7月28日日曜日

司法書士の後見業務監督体制

司法書士の岡川です。

前回の記事の続きです。

私は司法書士なので司法書士に限っていいますが、後見人司法書士による被後見人の財産の横領事件などは絶対にあってはなりません。
そのため、司法書士は、組織的にかなり厳しめの監督体制がとられています。

理想論としては、1人の犯罪者も出さない体制というのが、市民の側、家庭裁判所の側からは求められているのかもしれません。
もちろん、犯罪というのは、最終的には個々の人間に問題があるので、どんなに立派な体制を作っても犯罪をする人間は出てきます。
どんなに死刑制度を活用しても、殺人者がゼロになることはまずあり得ないでしょう。
また、規制を厳しくすればよいというものでもなく、厳しすぎることで後見業務に支障をきたすことがあっては本末転倒です。
その辺のバランスが難しいところですが、今のところ、司法書士による円滑な後見業務を妨げる程過剰な規制にはなっているとは思いませんし、司法書士による横領事件というのも、後見事件の総数(あるいは、後見にまつわる犯罪の件数)から見れば圧倒的に少なく抑えられています。

少しでも、「専門職後見人の筆頭」たる司法書士に対する信頼を維持・向上させるため、司法書士が誇る(といってよいと思います)後見業務の監督体制を少しご紹介しましょう。


まず、司法書士の一般的な監督体制から。

司法書士は、必ず各都道府県におかれた司法書士会に所属しています。
法令違反や会則違反などがあれば、司法書士会会長から注意勧告などの処分をうけることがあります。
さらに、司法書士は、法務局(法務省の地方支分部局です)の監督下にあります。
法務局には司法書士に対する懲戒権があり、違法な行為を行う司法書士は、法務局長からの懲戒処分を受けることがあります。
最も重いもので業務禁止、いわゆる資格剥奪ですね。
ちなみに、弁護士は、国家からの不当な圧力を受けないため等の理由により、弁護士会が弁護士に対する懲戒権を有しています(「弁護士自治」といいます)。
行政機関による懲戒を受けない士業というのは、おそらく弁護士だけです。


これに加えて、後見業務の場合、家庭裁判所の監督があります。
定期的に家庭裁判所に報告をしなければなりません。

そして、今までも、何度かブログで紹介しましたが、司法書士には、後見人の育成(研修)・供給・監督を担う「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」(通称「リーガル」)という公益法人があります。
もちろん、司法書士は基本的に各自独立していますので、リーガルサポートに所属していなくても後見業務は行えます。
しかし、家庭裁判所に提出されている後見人等候補者名簿に登載されている司法書士は、必ずリーガルサポートに所属し、かつ所定の研修を修了しています。
このリーガルサポートを通じて、他の専門職に比べてかなり厳しい監督・指導体制が構築されています(今年から新システムが導入されるのですが、実はそこにも新たな監督システムが組み込まれているようです)。

このように、リーガルサポート所属司法書士は、後見業務に関し、司法書士会、法務局、家庭裁判所、リーガルサポートという四重の監督下にあります。
司法書士の後見人による不正が比較的少ない理由のひとつが、この監督体制にあるのかもしれません。
「監督がなくても不正はしない」という高い倫理観を持った大多数の司法書士にとっては、ただ煩わしいだけのシステムともいえるのですが、それ以上に、不正を目論む不届者が業務をしづらい体制というのは、やはり必要なのだと思います。
それに、故意の不正は論外ですけど、細かいところで、適切でない処理をやってしまう可能性もあるわけで、それが重大な過誤になる前に是正できる体制というのは、善良な司法書士とっても有用なわけです。

というわけで、成年後見制度に関心がある方は、ぜひ地元のリーガルサポートまでご相談ください。(宣伝)
連絡先が分からなければ、市役所の福祉関係の窓口で聞けば、案内してくれるはずです。(宣伝)
いや、ブログを読んでいるということはネットが使えるのですから、「リーガルサポート+都道府県」で検索検索!(宣伝)
ちなみに、リーガルサポート本部と大阪へは→にリンクが張ってます。(宣伝)

では、ステマどころか露骨な宣伝も終わったところで、今日はこの辺で。

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