2014年1月8日水曜日

罪刑法定主義の派生原理その5「明確性の原則」

司法書士の岡川です。

罪刑法定主義シリーズが、の代表的な(伝統的な)4つの派生原理を紹介したところで終わっていたのですが、前回の記事で触れた明確性の原則も紹介しておきましょう。

「明確性の原則」とは、文字通り「刑法刑罰法規)の内容は、具体的かつ明確に規定されなければならない」という原則です。

罪刑法定主義は、何が犯罪で何が犯罪でないかをあらかじめ国民に提示しておくことで、国民の自由を保障する(国家による不意打ち的な処罰を避ける)機能を有していました。
とするならば、たとえ法律に犯罪行為が規定されていても、それがあまりにも漠然としていたら意味がありません。
そこで、犯罪構成要件が曖昧・不明確である場合は、憲法31条に違反して無効とされます。

最高裁判所は、違憲無効となるかどうかは、「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうか」によって判断するものとしています。

まあ、当然といえば当然の原則ですね。

ただし、実際には、犯罪行為の対象をかなり包括的に規定している法律は少なくありません。
それらも、なんやかんやで違憲無効とはされていません。
有名どころで、いわゆる「淫行条例」における「淫行」という要件が不明確かどうかが争われた事案で、「淫行」という規定も不明確ではないとされています。

「淫行」は「淫行」でわかるやろ、常識的に考えて・・・という話ですね(ただし、最高裁で反対意見が付されています)。

ただ、違憲無効とされないから良いってものでもなくて、そもそも国民の自由を不当に制限しないための原則なので、たとえ憲法31条の問題はクリアしていたとしても、できる限り具体的・明確に規定してもらいたいものです。
立法府のみなさん、そこんとこよろしくお願いします。

では、今日はこの辺で。


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罪刑法定主義シリーズ
1.罪刑法定主義
2.罪刑法定主義の派生原理その1「法律主義」
3.罪刑法定主義の派生原理その2「遡及処罰の禁止」
4.罪刑法定主義の派生原理その3「類推解釈の禁止」
5.罪刑法定主義の派生原理その4「絶対的不確定刑の禁止」
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