ワイドショーなどでは、元・光GENJIの大沢樹生氏の息子がDNA鑑定で実の子じゃないことが分かったとか、いや、99.9%親子だとかいう、第三者からみれば非常にどうでもいい話題で大盛り上がりです。
もちろん、当事者にとっては極めて重要な話なので、話し合いとか裁判所でしっかりと結論出したらいいと思うんですけど、公共の電波に乗せて応酬しあう話でも無かろうと思います。
さて、そんな芸能界の泥沼論争はさておき、親子関係について最高裁判決が出ました。
父親の認知無効請求は可能と判決 最高裁が初判断
子を認知した父親が、自ら認知無効の請求をできるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は14日、「無効の主張が一切許されないわけではない」との初判断を示した。
当たり前といえば当たり前なのですが、夫婦間に子が生まれたときは、その子は法律上も夫婦の子(夫の子かつ妻の子)となります。
そして、これを嫡出子といいます。
あとは役所に出生届を出せば手続きは完了し、きちんと夫婦の子として戸籍に載ります。
この出生届は、法律上当然に成立した親子関係を役所に報告するために提出するものです(こういう届出を「報告的届出」といいます)。
ついでにいうと、大沢さんの子はこの例ですね。
しかし、結婚していない男女の間に子が生まれた場合、母子関係は成立しますが、父子関係は法律上当然には成立しません。
したがって、出生届を出しただけでは、子は母親の戸籍に入りますが、父親は存在しません。
もちろん、生物学上の父親は、どこかに存在する(少なくとも過去には存在した)はずなので、その父親との間で法律上の父子関係を成立させる制度が必要になってきます。
それが「認知」という制度です。
「認知」は、基本的には認知届を役所に提出することによって行います(届出によって父子関係が生じるので、こういう届出は「創設的届出」といいます)。
ちなみに民法の条文上は、母親も認知が必要であるかのように読めるのですが(民法779条)、母親に認知は不要というのが確立した判例です(生んだ人が母親ということです)。
届出によって認知が行われるということは、全く血縁関係のない子を「俺の子だ」といって認知することも(事実上)可能であるということになってしまいます。
あるいは、本当に自分の子だと思って認知したら、実は他人の子だったという場合も考えられますね。
これらの場合も、役所はいちいち窓口でDNA鑑定なんかしませんから、その届出は「受理」されてしまうわけです。
もちろん、法律上は認められた行為じゃないので、故意にやったら「公正証書原本不実記載罪」というれっきとした犯罪になりますが。
受理された以上、書面の上では(つまり、法的な扱いとしては)、父子関係が成立してていることになります。
この場合に、「ごめん、あれ嘘だから(or勘違いだから)、無かったことにして」という「認知無効」という主張が通るか、という問題が生じることになります。
この点、民法には、「認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。」(民法785条)という規定と、「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。」(民法786条)の規定が存在するので、この辺の解釈が争点になりそうです。
そして、近年の通説では、次のように考えられています。
まず、785条については、「取り消すことができない」というのは、本当の血縁関係が存在することを前提に、詐欺や強迫によって認知してしまった(認知するつもりはなかったのに!)という場合であっても、それで取り消すことは認めないという意味になります。
血縁関係が存在しない場合は、本条のいう取消しの問題ではなく、認知の無効が問題となるわけです。
そして、血縁関係が存在しない場合の認知の無効については、786条において無効主張ができるとされる「利害関係人」に、認知届を出して「父」となっている人も含まれると解します。
かつての大審院判決では、(傍論ですが)認知者からの無効主張を認めないとされていたのですが、その後の下級審判例では上記の通説と同じ方向で、認知者にも無効主張を認める流れになっていました。
今回、それが最高裁でも認められたということです。
なお、今回の最高裁判決には、反対意見も付されています。
文理上はどっちとも解釈できるので、どっちがより妥当かという実質的な判断に持ち込まれたのですが、結局「一律に無効主張は許さない」として門前払いするのはよろしくない、というところで落ち着いたようです。
「何かの間違い」という場合は仕方ないとしても、わかっててあえて他人の子を認知するという行為は、ややこしくするだけなので、本当に必要なら、養子縁組なり特別養子縁組なり、正面から正々堂々と父子関係を成立させましょう。
では、今日はこの辺で。
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