司法書士の岡川です。
キムタク主演のドラマ「HERO」が好調のようです。
「あんなチャラい検察いねーよ」とか「検察官はあんなに暇じゃねーよ」とか、そういう無粋なツッコミはやめておくとして、今回は、「検察官とは何か」をご紹介します。
検察官というのは、簡単にいえば「公益の代表者」です。
各種の法律事件に関する国(行政府)側の代理人ということもできます。
その職務内容や歴史的経緯から「準司法機関」といわれることもありますが、本質的には、検察の職務は行政に属します。
司法権を行使できるわけではありませんからね。
したがって、検察官の事務を統括する検察庁は、裁判所(司法)ではなく法務省(行政)の下部組織です。
検察の仕事としてまず思い浮かぶのは、刑事訴訟において、犯人(と思われる人)を起訴することです。
要するに裁判所で「異議あり!」とかやる人ですね(←誤解に満ちた裁判のイメージ)。
日本では、国家訴追主義といって、国の機関である検察官が犯罪者を訴追することになっています。
検察庁法には、検察官の職務として真っ先に「刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求」することが掲げられています。
犯罪が発生したとき、犯罪捜査をするのは大部分が警察官の役目であり、その捜査で集まった資料は検察に送致(俗にいう送検)され、そのあとは検察官が裁判所に訴えるのです。
検察官にも捜査権はあるのですが、警察と比べて圧倒的に数が少ないので、現実には捜査官としてではなく法律家(多くの検察官が司法試験に合格した法曹資格者です。法曹資格を有しない検察官もいます。これは後日)として、刑事司法手続の最後の部分を担当することになります。
さて、刑事司法手続における検察官の仕事は起訴して終わりではありません。
起訴した後は公判を維持する必要がありますが、公判が終わっても仕事は終わりません。
判決が確定すると次は刑を執行しなければなりませんが、裁判の執行の指揮をするのは検察の仕事とされています。
死刑の執行は法務大臣の命令によりますが、検察官が執行に立ち会わなければなりません。
それから、刑事事件の記録は、裁判が終わった後は裁判所ではなくて検察官が保管します。
あ、もちろん、同じ検察官が全部やるわけではありませんよ(担当部署が異なるので)。
ここまでが刑事手続ですが、検察官は、民事手続でも仕事があります。
例えば、成年後見開始や、不在者財産管理人選任など、家庭裁判所に申し立てる必要がある事件について、適当な申立人(親族や利害関係人等)がいない場合もあります。
その場合に、公益の代表者が申立てをすることができるように、申立権者として法律に「検察官」が規定されている場合があります。
不適法な婚姻の取消しや、親権喪失、不在者財産管理人の選任なども検察官が申し立てることができると民法に規定があります。
逆に、人事訴訟においては、被告になる者が死亡していない場合は、検察官を相手(被告)として訴えを提起することになります。
例えば、父親が死亡した後に認知請求をしようと思えば、「認知しろ」と請求する相手(被告)は見ず知らずの検察官です。
もちろん検察官が認知してくれるわけじゃなくて、死者に代わって訴訟手続の遂行を担当するのが検察官ということです。
そのほかにも、検察官にはいろんな仕事があります。
法務省で働いている検察官もいますね。
ちなみに、現実の検察官というのは、非常に忙しい人達でして、「トイレに行くとき以外、一日中自分の席に座っている」ということも聞きます。
どれくらい忙しいかというと、法律上受理する義務がある告訴状を忙しいからという理由で送り返してくるくらい忙しいです。
被疑者を取り調べるのに毎回検察庁に呼び出すのも、別に偉ぶってるわけじゃなくて、検察官は検察庁から動く暇すらないからだと聞いたことがあります。
エリートの皆さんは大変ですね。
少なくとも、フラフラと自分で現場に捜査に行くような暇はないと思われます。
明らかに足りていないので、もう少し検察官の人数を増やしてもいいと思うんですけど、なかなか増えませんね。
優秀な人材が少ないのか、予算の関係で難しいのか・・・。
弁護士も余ってるみたいですし、人材が足りないってことはないと思いますがはてさて。
では、今日はこの辺で。
検察官についてはこちらもどうぞ→「検察官いろいろ」
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