2014年7月11日金曜日

脱法ハーブと罪刑法定主義

司法書士の岡川です。

最近、脱法ハーブというものが話題になっています。
違法薬物と成分や作用的には同じようなものであるにもかかわらず、法律の規制の対象外(あるいは、規制対象であるが規制の網をかいくぐって流通している)ドラッグです。
「ハーブ」だとか「お香」だとか言って売られているようですね。

「脱法ハーブ」という語が、あたかも何の害もないかのように誤解を与えてよろしくないということで、名称変更の動きもあるようですが、もともと「脱法ドラッグ」という語も「合法ドラッグ」といわれていたものを「誤解を与えてよろしくない」ということで「脱法」に変更された経緯があったかと思います。

「触法薬物」とかどうでしょう?


なぜ明確に違法なものと脱法的なものがあるかというと、立法技術と罪刑法定主義に絡む問題があるからです。

何かの薬物の所持や使用を禁止しようと思えば、まず規制対象の薬物を定義しなければなりません。
覚せい剤取締法や麻薬及び向精神薬取締法、薬事法、それらの政令や省令において、1000種類以上の化学物質が何らかの規制対象の薬物の定義に含まれるようになっています。

薬事法の改正などで、今ではだいぶ包括的に規制対象とされているのですが、それでも成分が少し異なれば定義から外れます。
そして、どの法律の定義にも当てはまらない化学物質については、処罰の対象外にならざるを得ません。

「脱法」という部分が残るのは、新しい成分の薬物の流通と立法(行政立法も含む)との間に、どうしてもタイムラグが起きてしまうからです。

そこで、例えば「同じようなもん」だからといって、定義から外れた薬物の販売を犯罪として取り締まると、「類推解釈の禁止」に反します。
それならいっそのこと「吸引するとラリってしまう化学物質」といった抽象的な定義にしてしまえば取り締まりは簡単ですが、それは「明確性の原則」に反するおそれがでてきす。

そうすると、取り締まる行為のほうが違法になってしまうわけですね。


もっとも、「合法」といいつつ違法な薬物もきっと大量に出回っているでしょうから、とりあえず取り締まれる分は徹底的に取り締まってもらいたいものです。

では、今日はこの辺で。

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