2014年8月15日金曜日

法律行為入門その2(成立要件)

司法書士の岡川です。

前回の続きです。

法律行為の基本的な要件として、成立要件と有効要件があります。

法律行為は、そもそも成立していなければお話になりませんし、成立したとしても「無効」ということがあります。
成立したことを前提に、有効か無効かが問題となるわけです。

法律行為は、定義として「意思表示を主たる要素とする」ものですから、「法律行為が成立した」というためには、意思表示が存在しなければなりません。
よってこれが基本的な成立要件です。
「この土地くださいな」という「申込み」の意思表示と「うんいいよ」という「承諾」の意思表示が合致したところに売買契約(法律行為)が成立するわけです。

「この土地は俺様がいただいた!」と勝手に宣言したとしても、売主の「売る」という意思表示が存在しなければ売買契約は成立しません。
これは、有効とか無効の問題ではなく、「そもそも契約が成立していない」という状況です。

例えば、「身に覚えのない契約に基づく代金を請求された」ような場合、本当に身に覚えがなければ「そんな契約無効だ!」というのではなく、正しくは「そんな契約は成立していない(不成立だ)!」と反論することになります。


法律行為の種類によっては、意思表示の存在以外にも成立要件がある場合があります。

例えば、遺言の場合は、「この土地はお前にやる」と口頭で言うだけでなく、法定の形式に則った遺言書を作成しなければいけません。
任意後見契約も、公正証書による契約が必要です。
これらのように、「意思表示」以外に一定の方式が要求されている法律行為を、「要式行為」といいます。

あるいは、消費貸借契約や使用貸借契約などは、目的物の引渡しが要件になっているので、契約書を作成しただけでは契約は成立しません(こういう契約は「要物契約」といいます)。
この場合、目的物の引渡しも成立要件になるわけです。


なお、訴訟の場面では、契約(法律行為)に基づいて何かを請求する場合、契約(法律行為)の成立要件を満たしていることは、原則として請求する側が主張立証することになります。
「貸した金を返せ」と請求するのであれば、原告側が金銭消費貸借契約の成立を主張立証しなければなりません。
これに対して、「契約は一応成立したが、それは無効だ」というのは、原則として相手(請求された側)が主張立証することになります。

この、「成立したが無効だ」というのは、有効要件を満たしていない場合ということになります。

有効要件については、次回。

では、今日はこの辺で。


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法律行為入門シリーズ
法律行為入門
・法律行為入門その2(成立要件) ← いまここ
法律行為入門その3(有効要件)
法律行為入門その4(効果帰属要件・効力発生要件・対抗要件)
(こちらも参考)
法律行為について
「準法律行為」について

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