前回に引き続き、法律行為の入門的なおはなし。
意思表示が存在し、その他の成立要件も具備すれば、法律行為が成立します。
しかし、外形的に成立した法律行為が有効か無効かというのは、また別問題になります。
有効要件が備わっていなければ、その法律行為は、「そもそも無効」か、あるいは「無効にする(取り消す)ことができる」ものとなります。
まず、法律行為には(あたりまえですが)法律行為をする当事者が必要です。
当事者がいなければ、(あたりまえですが)法律行為は成立しませんが、当事者は存在すればよいというものではありません。
法律行為時に、当事者に必要な「能力」が備わっていなければなりません。
必要な能力とは、「権利能力」「意思能力」「行為能力」の3つ。
泥酔してまともに判断能力を有していない状況で契約しても、その契約は無効です(意思無能力)。
また、成年被後見人が自分の判断で土地を売ったとしても、あとから問答無用で取り消す(無効にする)ことが可能です(制限行為能力)。
制限行為能力者の行為は、ただちに「無効」なのではなく「取り消すことができる」にすぎない(つまり、取り消すまでは一応有効な法律行為とされる)という点はテストに出ますので覚えておきましょう。
さて、権利能力・意思能力・行為能力が備わっていることが前提として、次に、法律行為は、「確定性」「実現可能性」「適法性」「社会的妥当性」がなければならないとされています。
これらは…まあ、文字通りの意味ですね。
「なんか売ってください」「では、何かを売ります」というやりとりでは、確定性がないので売買契約は成立しません。
「死んだペットを生き返らせる」というような契約は、実現可能性がないので成立しません。
適法性というのは、当事者の合意によっても変えることができない規定(強行法規)に反するような契約です。
例えば、労働契約で「残業代は払わない」という契約をしたとしても、それは違法無効です(労働基準法違反)。
さらに、たとえ契約自体が適法だったとしても、社会的妥当性がなければやはり無効となります(民法90条違反)。
いわゆる「公序良俗違反」というやつですね。
例えば、殺人依頼とかですね(契約自体は、一種の請負契約といえますが、内容が社会的に認められない)。
これが認められると、例えば、殺人請負契約履行請求訴訟を提起して勝訴すれば、裁判所が「被告は、訴外Aを殺せ」という判決を出すことになってしまいます。
社会的に妥当でない契約は、無効として、国家(裁判所)がお墨付きを与えないようになっているわけです。
最後に、能力を具備した当事者が、確定的で実現可能で適法で社会的に妥当な法律行為をするとしても、意思表示が完全なものでなければなりません。
詐欺・強迫・錯誤・心裡留保・通謀虚偽表示といった場合に問題になります。
この辺は長くなるのでまた今度じっくりと。
このような要件を満たして初めて、「法律行為が有効に成立した」といえるのです。
法律行為が有効に成立したら、それで完璧か、というと安心するのはまだ早い。
次回は、それ以外の要件をまとめてご紹介しましょう。
では、今日はこの辺で。
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法律行為入門シリーズ
・法律行為入門
・法律行為入門その2(成立要件)
・法律行為入門その3(有効要件)
・法律行為入門その4(効果帰属要件・効力発生要件・対抗要件)
(こちらも参考)
・法律行為について
・「準法律行為」について
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