司法書士の岡川です。
以前、「法律行為」という概念を紹介しました。
法律行為とは、「意思表示を主たる要素とする私法上の法律要件」と定義されます。
もう少し詳しく定義づけると、意思表示を行ったときに原則としてその意思の内容に沿った効果が認められる行為が法律行為ということになります。
法律行為の典型である契約では、例えば「この土地を買います」「この土地を売ります」という意思表示の合致によって、当事者が欲する「土地の所有権移転」という効果(法律効果)が生じます。
「法律行為」は、伝統的な民法学における基本的かつ重要な概念ですので、覚えておきましょう。
さて、私法上の法律要件には、法律行為以外の行為もあります。
私法上の法律効果を発生させる行為であって、法律行為でないものは、法律行為に類する、あるいは準ずるものとして、「準法律行為」といわれます。
例えば、「催告」という行為があります。
「催告」というのは、「今月末までに100万円払え」みたいな通知をすることをいいます。
この「催告」には、行為者の「弁済してほしい」という行為者の意思が含まれていますが、催告したからといってそのまま表意者が欲する「弁済」という効果が生じるわけではありません。
催告により「時効の中断」や「解除権の発生」といった法律効果が生じますが、これらの法律効果は当事者の意思内容にかかわらず法律で決められたものです。
「催告」と同じく、債務の弁済を債権者側で拒む「受領の拒絶」というのも、意思内容(弁済を受けない)とは異なる法律効果を生じさせます。
これらは「意思を相手に通知する行為」であって、意思内容に沿った効果が生じる法律行為ではありません。
これを「意思の通知」といい、準法律行為の一種です。
「意思」ではなく、「事実」を通知する行為もあります。
例えば、債権譲渡の通知は、「債権譲渡をした」という事実を債務者に通知する行為です。
その他、代理権授与表示というのも「代理権を授与した」という事実を契約の相手方に通知する行為です。
これらは、「観念の通知」といい、やはり準法律行為とされます。
準法律行為は、法律行為の規定が類推適用されます。
まあ、「法律行為かそうでないか」というのは、(学術的な意義はともかくとして)実際のところは大して重要でもないので、「法律行為とは違う」ということさえ知っておけば、後は何も難しいことはないですね。
では、今日はこの辺で。
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